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【超短編小説】天才とカンニング

 顔だけはいい僕である。
 だが成績は下の下。毎回赤点をくらって、補習授業を受けさせられている。
 わりと進学校のわが校であるから、こんなバカは僕だけだ。

 だが今回は違う。学年一の天才と異名をとる子の隣の席になることができたのだ。
「ねえ。頼むからカンニングさせてよ。お願い」
 僕にそう頼み込まれて断れない女子がいない事は百も承知だ。
「でも・・・カンニングなんてよくないよ」
「頼むっ! この通り。今回赤点とるとまずいんだよ」
 嘘である。赤点とったらまずいのは毎回のことだ。口からでまかせだった。
「そっか・・・わかったよ。君だから特別だよ」
「よしっ!!」

そしてテストの時間。あれやこれやの手を使って答えを教えてくれる彼女。さすがに天才だけあって、カンニング方法も天才的とは。おそるべしである。

だが、
「佐藤・・・また赤点だぞ。今回も補習だからな。まったくおまえという奴ときたら」
 教師があきれ顔でテストの答案を返却する。
「なっ!?」
 そんなバカな。信じられない。なぜだ??

 僕は頭を混乱させながら、教師がテストの答案を返却していく様を眺めていた。
 その時、教師は訝し気な顔で、
「どうした、松尾。体の具合でも悪かったのか。赤点だぞ」
 なんと僕の隣の彼女が赤点をとっていた。

 その後、放課後まで待って彼女を呼び出す。
「どうしたっていうんだよ。松尾、お前なんで赤点なんだよ。そのせいで・・・」
 僕まで。という言葉だけはさすがの僕も飲み込んだ。
 そんな僕に彼女は言った。

「佐藤君といっしょに補習授業受けようと思って・・・」

 しまった・・・
 そのパターンか!
 僕は頭を抱えてうずくまる。

 今回も赤点回避ならず!

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