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【超短編小説】遺産の行方

 親父が亡くなった。
 莫大な遺産はどうなるのか? すべては遺言状に書いてある。

 『遺産はすべて親愛なる女性、五条ゆき子にゆずるものとする」

 兄弟たちは色めき立つ。
 だれだ? 五条ゆき子とは? 堅物の親父にそんな女性がいたとは。
 しかし、そのような女性、影も形も見えない。
 俺は指示を出す。
「日本中。いや、世界中でもそれらしい女性を探し出せ! どんな手をつかってもかまわん」

 だが捜索は難航を極めた。
 同姓同名はいたが、さすがに親父とは縁もゆかりもなさすぎる。
 なにしろ親愛なる女性! である。

 執事がある日、お耳に入れたい事が・・・
 と俺にささやいてくる。

「おお? とうとうそれらしい女性がみつかったのか?」
 そう尋ねる俺に執事が言った。

「いえ。そうではありません。もうお父上の資産を捜索で全て使い切ってしまいました・・・」

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