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【超短編小説】祈りが叶った日の事
「ねえ牧師さん。神様にお祈りすると本当に願い事は叶うの?」
その少年の問いに、私は自信を持って答える。
「叶うとも。その証拠にきみにだけ私の秘密を教えてあげよう」
あれは私が人生の目的もわからずもがいていた頃の事だ。
苦しい時の神頼み。私は祈ることを始めた。
するとどうだろう、一億円を拾ったのだ。
しかし、持主があらわれてしまえば、1割程度しかもらえない。
不純な気持ちではあったが、私は落とし主があらわれないことを祈った。
すると本当に落とし主はあらわれず、そのお金はそっくりそのまま私のものとなった。
私は神に感謝した。
神に仕える事を決め、一億は教会堂の建設費にあてた。
これらの事を語り終えると、少年は感心したように、
「ふーん。神様ってすごいんだね。僕のお父さんもいっぱいお祈りをしたら、お酒をやめてまた働いてくれるかな?」
そう言う。
「もちろんさ。きみがお祈りするのはもちろん、お父さんも教会へ来てお祈りをするといいよ」
少年は首を振った。
「だめだよ。お父さん、神様なんて絶対にいないっていつも僕に言うもの」
「なんでそう思うのかなあ?」
「お父さん昔、お金を落としたことがあるんだ。でもね、そのお金は違法な賭け事ってので稼いだお金だったから、警察へ届けることもできずに、泣く泣く諦める事しかできなかったんだって。あのお金があれば、お父さんの会社もつぶれずにすんだのにって。
だから神様なんていないんだって。お父さん僕によくそう言うんだ」
私は天を仰ぐ。
ああ神よ。それはおそらく・・・
私はもう少年に何と言ったらいいかわからなかった。
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