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【超短編小説】サプライズパーティーの思い出

 とあるサプライズパーティーの思い出。

「りくって1月9日空いてる?」
「え?」
 あまり話さないが、一応友達の一人と言ってもいい。そんな微妙な距離感の同級生男子の山崎にそう聞かれ、僕は答えに窮した。
その日は・・・
 山崎が言葉を続ける。
「実はさ、1月9日はゆなの誕生日なんだよ。だからみんなでサプライズパーティーしようって。りくも来れるだろ?」
「あ・・・うん。そういう事なら行くけど・・・」
「よし、決まりな」
 僕は思う所があったのだが、仕方ない。なにしろゆなはクラスの人気者。誘われてよかった。うん。そう思っておこう。
 
 誕生日当日がやってきた。
 お店を貸し切って、ゆなを待ち受ける。
 ゆなの親友、みさきの先導で真っ暗な店にゆなが来たところを、みんなでクラッカー。
 ありきたりではあるが、まあ妥当なサプライズである。集まった面々も意外性のあるものといえるし。特に僕までいるとは思わないだろう。だってあんまり接点ないもの。
 わりとバラエティに富んだ顔ぶれが揃った。

「ちょっと待ってってば!」
 その時、あせった声が店の外から聞こえた。
僕らは準備の真っ最中だった。そこへ扉を開けて現れた顔を見て僕らは呆然とする。
ゆなだった。
 ゆなも僕らの顔を見渡して頭に?マークを浮かべる。
 みさきがすぐ後から入ってきて、ごめんと手で示す。
 なぜかはわからないが、失敗の雰囲気に僕は冷や汗をかく。

「あ・・・ああ~誕生日!」
 バレた! ゆなのセリフでみんなが落胆するのがわかる。
 みさきが言い訳がましい口調で言う。
「ごめん、みんな。ここ前、ゆなと来た事あるの忘れてて。ゆな、あの店でしょってずんずん歩いて来ちゃって・・・」
 申し訳なさそうなみさき。そしてサプライズ失敗に、本人もちょっと居心地わるそうな、ゆな。
「そっか・・・バレちゃったらしかたないな。ちょっと手順は狂ったけど、まあサプライズパーティーだよ」
 山崎が頭をかきながら言う。
 あーあ。なんて日なんだ。僕は思う所あって、それでも来たというのに。失敗とは・・・

「で、でも・・・みんながこんなに集まってくれて嬉しいよ。 いつものメンツとは違う子もいるしさっ!」
 取り繕うようにゆなが言う。主賓に気を使わせちゃって、情けない。
「あ! りく君も来てくれたんだ。私たちあんまり話さないから珍しいね」
 唐突に話を振られて僕は戸惑う。
「うん。誘われてさ」
「ありがとね」

「じゃあちょっと打ち合わせとちがうけどハッピーバースデー歌うか」
 山崎が言う。その声にみんなうなずき、事前に打ち合わせてた通りに、曲が流れだす。

『はっぴば~すでーとぅ~ゆ~、はっぴば~すでーとぅ~ゆ~、はっぴば~すでーでぃあ~ゆな~~~』
 僕はクラッカーをゆなに向ける。が、みんながこちらを向く。
『あーーーんど、りく~~~』
 え? ぼくは目を見開く。
『はっぴば~すでーとぅ~ゆ~!!』
 クラッカーはゆなではなく、僕に向けられた。パンパンパン、クラッカーが炸裂音を響かせる。
「誕生日おめでとー、ゆなとりく」
 みさきが笑って言う。僕は鳴らし損ねたクラッカーを手に、あぜんとしていた。
 気づくと、ゆなの手にも鳴らした後のクラッカーがあった。

「サプライズ大成功―!!」
 山崎が言う。そう。今日1月9日は僕の誕生日なのだった。
「奇遇だよね、誕生日一緒なんてさ。そのこと知って、私が考えたんだよ」
 ゆなが言う。
「じゃあ、サプライズ失敗は・・・」
「あれは演出だよー」
 ゆなが笑う。みんなが笑う。

 そこへケーキが運ばれてくる。でかい。
 ゆなが僕を引っ張り、二人ケーキの前に並ぶ形になる。
 ゆなは、
「じゃ、あらためておめでとう! 私たち!」
 そう言って破顔一笑した。

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