どうしても聴きたくなって来た。チューニングもなっていない古いエレキギターをきゅるきゅる言わせながら、ときどき躓きながら、鼻歌レベルのロックを口ずさむ。
 流れる文字列は愛や生死をぎゅっと縮めて触りやすくしたようなそれで、それなのにどこまでも鋭く刺さる。人生の味がする。葬式のごはん、遅れてくる記憶、光の中の空白。匂いのない風のように、詩のない花のように、自分自身を巻き上げてくる。ボブの髪先が揺れて、そんな単純な釣られ方でいいのか、自分ってそんな女なのか、なんてにゃんたこの嫌われポイントがすこぶる愛しい。どうだっていい、なんだっていい、からだのかたちに心がはまっていけばいい、水の底からみる春の空のように眩しいものであればいい、多分酔ってる、ねむってしまう、ねこになるから見てて、ずっとそばで手を差し伸べていて、負けそうなままを愛していて、背の高い路地を抜けて星を探しに行こう、そのあと屋根に登って夜の底を見に行こう、ずっと二人でいよう、二人でそこまで行ってみよう、それから、それから生きて、生きながらえて、死ぬまで眠ろうか。
ねむって、いてね。



24.0321

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