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大人も子供も豆柴も。

月に一回、朝の公園清掃に参加している。

これは別に地域貢献とかそういう立派な志があるわけじゃなくただ単に当番だからやっているのだが、本来なら一年で交代のところを「人がいないから」というよく分からない理由で、ズルズルと延長になり現在三年目に突入している。

月一とは言え、いつもより早く起きなければならないので夜勤で働く身にとっては地味にキツい。毎回時間ギリギリに起きて、素っぴんに髪はボサボサ、寝ぼけた顔をマスクで隠して慌てて家を出る。さらにその日は寝不足のまま仕事に行く事になるので、正直「面倒くさいなぁ」と思う部分は大きい。

今月も当番に行ってきた。先週末の事である。

もう三月も終わりだというのに、やたらと寒い朝で、玄関のドアを開けた瞬間ついさっきまで自分がいた布団の中に戻りたくてたまらなかった。

冷たい空気に身を震わせながら公園に着くと、すでに何人かが鎌や小型のくわの様な道具を使いながらせっせと草取りをしていた。

「おはようごさいまーす」と誰に言うともなく挨拶をして、掃除用具が入っている物置に向かう。私の後からもパラパラと住民が集まって来る。中には貸し出されるものでは用が足りないのか「Myくわ」持参の年配の方もいて、草取りへの意気込みを感じる。

昨年から私はトイレ清掃の担当になっているので、物置から洗剤やらブラシやらを持ち出して掃除を始める。

「おはようございまーす。今日もよろしくお願いします」

町内会長がひょっこり顔をのぞかせる。温厚が服を着て歩いているような方である。人の良さそうな笑顔。私の勝手な想像だが、この会長さんも他になり手がいなくて役を引き受けているのではなかろうか。なんとなくそんな気がする。

公園のトイレ=汚いというイメージがあると思うが、この公園のトイレはとても清潔に保たれている。それは市の職員が行うのとは別に、町内会が自主的に清掃をしているからだと思う。(私の他にも担当者がいる)

「ここのトイレはキレイだって有名なんだよ」ホントかどうか分からないが、前に町内会の役員の人が自慢げに言っていた。

そう言えば、たまに宅配便のドライバーさんがここを利用しているのを見かける。一日中外を回っているドライバーさんがトイレの場所を確保するのって結構大変そうだ。しょっちゅうコンビニで借りるわけにもいかないだろうし。そんな時に気兼ねなく使えて、しかも清潔なトイレがあったら助かるんじゃないだろうか。

そう考えると、ひょっとして私のやっている事は働く誰かの役に立っているのかも知れない。


「おおい、ボク!そんな格好で寒くないんかい!風邪ひくなよ!」

どこの町内にも一人はいるであろう、世話好きで地域のご意見番的なおじさんが中学生くらいの男の子に声をかけている。

中学生男子は半袖シャツ一枚で、あちこちに積まれた雑草を一生懸命集めている。

子供の参加は自由で、強制ではない。でもあの子いつもいるんだよな。あんな子、将来絶対いい大人になるに決まってるじゃん。

毎回、豆柴を連れて参加している人もいる。とにかくキャワゆくて(ナデナデしたい……)と思っているのだが、ご近所さんとは言えあまり親しくない飼い主さんに声をかけるのは緊張してしまうのと、みんなに人気のワンコなのでいつもまわりに人がいるから、私は遠くから見つめるだけに留めている。


大人も子供も豆柴も、ご近所さんが集まる朝の公園清掃は面倒くさい。

面倒くさいけど、参加したあとは何故だかちょっとあったかい気持ちになる。

しゃーない、また来月も頑張るとするか。

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