さよなら、相棒。
今月、私は約13年連れ添った相棒とさよならする。
その相棒とは車、マイカーのことである。
今の車に乗り始めたのは2011年。その年私は3年間通った専門学校を卒業した。(何度かnoteに書いているが、私は40代の学生だった)3月11日は卒業式で、卒業証書授与が途中で中断したが、どうにか最後まで終わらせる事ができた。医療系の資格を取った私は、4月から整形外科のリハビリ室に勤務する事が決まっていた。
勤め始めた頃はまだ鉄道が復旧しておらず、片道40分かけて自転車で職場まで通った。ほどなくして運行が再開し、そこからは電車通勤に切替えたのだが都会と違ってこの辺はさして本数が多くない。対して仕事は激務で帰る時間もまちまちだったから、だんだん電車では通いきれなくなり、仕方なく車を買う事にした。
そんな経緯だったので、通勤の足にさえなればどんな車でもいいと思った。こだわりは全くなく手頃な価格で手に入れた中古車が、今の車である。
あれから13年、決して大切に乗ってきたとは言い難い。逆に車好きの人には呆れられるくらいの手のかけなさだと思う。オイル交換は「そろそろ、交換したほうが…」とガソリンスタンドのスタッフの方に真剣に言われるくらいなってからようやくやる感じだし、洗車だって年に1、2回くらいのものだ。それでも私の車は、さしたる故障もなく本当に良く走ってくれた。
ほぼ車で遠出はしない私だが、何年か前の夏の終わりに、ふいに思いついて一人で信州を旅した事がある。
信州そばを食べて、『いわさきちひろ美術館』へ行った。そして素敵な図書室のある温泉旅館に泊まった。車は軽快に走り、開け放った窓からほんの少し秋の空気を含んだ風が車内を吹き抜けていった。とても楽しい旅だった。
去年亡くなった我が家の猫を、幾度となく動物病院に連れて行ったのも今の車だ。そんな時は心がとても動揺しているけれど、毎回「落ち着け、落ち着け。安全運転で行くんだ」と自分に言い聞かせながらハンドルを握った。私の車はいつも私と猫を無事に病院に送り届けてくれた。
今でも時々、助手席に乗せたキャリーケースを思い出す。そして少し切なくなる。
車は物だけど、それだけじゃない。
私にとっての思い出だ。
本当は、もう少し乗ろうかと迷った。
けど猫が逝ってしまってから、なんとなく、なのだが「ねこ子さん、この辺で引退させてもらっていいでしょうか」と、車が言っているような気がしたのだ。
これまでずっと安全に目的地まで走ってくれていた私の車が、そろそろ休みたいと思っているように感じた。
だから、手放すことにした。
手放すことを決めた時、やはりちょっと寂しい気持ちになったが、でももう「お疲れ様」と送り出す時期なんじゃないかと思った。
そして今日、最後の洗車をした。13年間の感謝を込めて。
思い出ごと手放すわけじゃない。たくさんの記憶と共に、この車も私の思い出の一部になるんだ。今はそう思っている。
さよなら相棒。
今まで、本当にありがとね。
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