見出し画像

母さん、結局公務員が安定ですか⑫

彼女がいる彼のお家で朝を迎えた私。彼の寝顔を見ながら思ったことは「幸せ、嬉しい」といった気持ちではなく...コロナ禍就職記マッチングアプリ編第12話開幕―――

【前回のお話↓】

1.この関係ってなんだろう

あの朝からもやもやしていた。

一晩一緒に寝たけど、彼の態度は何も変わらず今まで通りだった。毎日LINEして、都合が会う日は二人でご飯を食べて、たまに彼女のことを訊くと愚痴しか出てこなかった。私はその度に、彼がいつか私のところに来るんじゃないかと期待した。

でも、終わりを告げるのは早かった。

ある日、彼の家で深酒をした日があった。お互いに日頃の不満を全てショットで潰していく感覚だった。今考えると本当に子どもだったなと思う。

案の定、かなり酔ってそのままベッドに二人で飛び込んだ。そこからどうやって寝たのかは覚えていないが、夜中に吐き気がして目が覚めた。目を開けて横を見ると、彼は私に抱き着くようにして寝ていた。少し驚いたが、彼もだいぶ酔っていたし、しょうがないか...と思い、冷静に体から剥がして無事にマーライオンを終えた。

朝になると、彼は昨晩のことを全く覚えていなかった。私が家にいることにさえ驚いていた。

ベッドにあぐらをかいて座っている彼に向き合うように、私もベッドに座った。すると―――

彼が正面から私の肩にもたれてきた。

驚きながらも、私も彼にもたれた。それまで彼の腕は地面に垂れたままだったが、少しずつ私の背中を囲んでいった...しかし、―――彼の腕は私の体に触れる前に落ちていった。

彼は私に「ごめん、ちょっと雰囲気にのまれそうだった...。駄目だね。」と言い、私を置いて身支度を始めた。

出社する彼と一緒に家を出て、家に帰った。

帰り道、彼のあの行動と言葉が頭の中を駆け巡った。

あれは何だったのか、意味が分からないと思った。

あれから時間がどれだけ過ぎても、彼とは何もなかった。悲しいくらい何も変わらなくて、この現状に段々と嫌気が差してきた。

だから、私は彼の気持ちを知りたくなって2回目の告白をした。


2.2回目の告白は。

何も変わらない現状に嫌気が差して、私は彼に電話をかけた。

「Aさん、私はずっと変わらずAさんのことが好きです。Aさんは私のことをどう思ってるのか知りたいです...。」

それを聞いたAさんは、

「あ~...そうだよね。ごめんね、今は彼女のことで気が滅入ってて、これ以上異性間のゴタゴタで悩みたくないから。今は付き合うとか考えれない。」

そうなんですね。今までありがとうございました。とだけ伝えて電話を切った。

彼とはこの日を機に、連絡を取らなくなった。会わなくなった。

一緒に遊んだ時に取った写真も全部消した。


3.かすかな希望から解放された

彼に改めて振られた時はショック...ではなかった。むしろ、その言葉を聞いた時安心したし、『解放された』この思いが強かった。

私はずっと彼に対して好意を持ちながら、彼女の愚痴を聞いて、彼から彼女といる時より楽しいと言われて...私は彼といつか付き合えると希望を持っていた。

でも、いつからかそれが怪しく思えてきて、不安になっていた。

だからこそ、彼から改めて振られた時にそんな不安が完全に消えて、吹っ切れた。そしてまた、私は何事も無かったことのように、現実からマッチングアプリへと戻って行った。

その先には夫になる男性がいるとは知らず。


――――数か月後。

「お久しぶり。元気?」

数ヶ月経ったころ、彼からラインがきた。


【次回予告】

彼の連絡先は消していなかった。数ヶ月ぶりに、急に彼からラインが送られてきて...。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?