業が深いふたりのこれから―アニメ『小市民シリーズ』第4話雑感

1週間空いて放送された第4話。
今更ながら雑感です。

今回は『春期限定いちごタルト事件』の解決編。

小佐内ゆきが封印したはずの狼の心を以てして、自分に害をなした男子生徒に対して恨みを晴らそうと画策している。

それを阻止するために、狐の心を以てして、かつてのように探偵役に徹した小鳩常悟朗が、堂島健吾とともに事件の真相を推理する。

推理の核心に関してはまあネタバレになるので、サラッと感じたところを列挙してみる。

・車道を隔てて自転車をかっ飛ばしていた男子生徒の自転車かごの中の書類入れまで視認している小鳩くんの動体視力が高すぎる

・教室内の推理において出てくる、螺旋階段を上っていくイメージ。動かない推理に動きを作る工夫を随所にちりばめている

『小市民シリーズ』4話「狐狼の心」あらすじより

・数字を使って健吾の考えを変え、納得させようと試みる小鳩くん。よく考えたら感覚的な数値が大半なのに、数字で計算することでそれっぽい説得力を付与できるあたり、狐の狡猾さの披露といえる

『小市民シリーズ』4話「狐狼の心」あらすじより

・推理の果てに確信を得たところで、小佐内さんからのLINE。
 
 「メッセージの送信を取り消しました」

 これを、小佐内さんの身に何らかの危機が迫っていると捉えて行動を起こ す小鳩くんと健吾。冷静に考えたら、「SOSの発信」とは限らないのだけ  
れど、まあこういうふうに思っちゃうわな。そして2時間ドラマだったら  
定型的にヒロインがピンチに陥って主人公が助ける流れよね。そういうあ  
りきたりなクライマックスに持っていかないのが、いかにも米澤作品なのですが。原作で、携帯の機種の古さから、小佐内さんの送った画像が見られず「空メール」になってしまったという部分をどう処理するかと思っていたけど、きっちりLINE上の処理で落とし込んできた。上手いよなあ。

・初見だったらクライマックスシーンが肩透かしかもしれない。けどまあ、『夏期限定トロピカルカフェ事件』の終盤で穏当じゃないシーンがあるし、そういう展開はこの先に期待。


『小市民シリーズ』4話「狐狼の心」あらすじより

「……業が深いね」
「お互いにね」
 ほとんど同時に、深い深い溜息をつく。

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』242頁

結果的に「仕返し」をなしとげたものの、自身の狼の心を捨てきれず、小市民になるという目標から足が遠のいたことを後悔する小佐内さん。

一方で、必然性に迫られる場合もあったとはいえ、結果として「探偵役」をやめられなかった小鳩くん。

もうやめようかと提案する小佐内さんに対し、ローマは一日にしてならずと言わんばかりに、地道に小市民を目指そうと諭す小鳩くん。

が、その直後に不意打ち的な「危害」を加えられて、さっそく執念深さを発揮しようとする彼女と、息をするように推理を始める彼――。

結局変われないふたりが「破局」を迎えちゃう未来への布石としてはコミカル過ぎる気がするが、今はこれくらいのライトさがむしろありがたい。

次回から『夏期限定』がスタート。

あらためて感じるのが、いっそ2クールで『秋期限定栗きんとん事件』まで映像化してほしかったなあ、ということ。

『夏期限定』までで終わってしまうと、何とも後味が苦々しいもので満たされてしまう。とはいえそれが、米澤作品らしいといえば、らしいのですが。

(了)

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