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柏餅

 五月四日。子どもの日。午後三時のおやつの時間。本日のおやつは柏餅。一枚の葉っぱにそっと包まれた丸い草餅が子どもの日を丁寧に綺麗にそして素朴に彩る。柏餅を手に取り涎が垂れる口に運んだ。口の中は草餅と粒餡の食感。甘いけれども甘過ぎず上品な味わい。丁度いい味わい。今まで食べた柏餅とも違う味わい。もしかして、これが大人の味?何かしら変化した?噛み締め同時に過去を懐かしむ味わいに変化する。
 小学生の頃は柏餅が「特別な日のおやつ」だった。一年に一回だけのおやつ。誕生日と同じくらい特別で大切なおやつの日。子どもの日が誕生日と同じくらい楽しみな日でもあった。
 中高生の頃。生意気盛りの反抗期。人一倍怖がりなのに両親に反抗。抵抗。子どもの日の柏餅すら「要らない」「子ども扱いしないで」「食べたくない」口にせずぽつんと放置。結局悲しみの目で家族の誰かが口にする。
 大人間近の子どもの日。柏餅を口にして大人になることの不安定な心を語る。「大人になるのが怖い」大人に憧れるのに子どもに戻りたがる。ゆらゆら揺れる心。
 
 

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