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中秋の名月

 二〇二四年。九月一七日。中秋の名月の日。夜も遅い時間にそっとベランダに出る。家族の人が目を覚まさない様に足音と気配を殺して外に出る。ベランダに出れば其処は宵闇の景色。そして宵闇の空にポツリと浮かぶ中秋の名月。圧倒されてたった一つ息を飲みこんだ。宵闇も中秋の名月も何度見ても華美ではないのに秀麗で全てが引き込まれる。現在、想い浮かんた感情も。ずっとコトリと抱え込んだ心の片隅に散らばる不安も。上手い言ノ葉でどうしても紡ぎたいのに紡げない。言ノ葉で紡ぐが稚拙でチグハグでちっぽけな言ノ葉になる。何度目かで上手い言ノ葉で紡ぐことを諦め一陣の風にそっと身を任せてみた。
 中秋の名月を眺めながら懐かしき古き詩を小声で諳んじる。感情を込めるところは感情を込める。演じるところは演じる。詩の作者がどういう思いで書いたのか考えて諳んじる。
 

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