同じつらさを知る君へ

 昨日、Youtubeで、脳腫瘍の治療を経て、中学校に通うようになった少年を見た。治療は小学6年生の9ヶ月間。手術をして、化学療法まで取り組んだという話だった。治療を終えた直後に小学校を卒業して、中学校に入学した少年は、「医者になりたい」と夢を語りながらも、治療前よりも集中力や記憶力が(一時的にだと思うけど)落ちてしまっていて、勉強がうまく行かずに泣いている場面もあった。

 動画を撮る親御さんに「僕の辛さがわかるわけない」と泣きじゃくる少年に、私は自分を重ねた。
 私も治療を終えてすぐは、頭の中に靄がかかっていて、論文も、小説も、漫画も読めなかった。内容を覚えていられず、次の日には読んだ内容をほとんど忘れていた。読書は私にとって水みたいなもので、「もう何も読めないかもしれない」と思うと悲しくて仕方なかった。
 加えて、もちろん体力も落ちているわけで。大学に通い、構内を歩き回って講義を受けることはできなかった。幸い病気がわかったのは3年次で、ゼミを残して卒業に必要な単位は取っていたから、夕方の人が減った時間を見計らって、教授の研究室で卒論指導を受けた。
 もっと勉強したかった。いろんなことを学びたかった。留学だって行きたかった。
 車で大学に着いても、起き上がれなくて研究室まで行けずに悔しくて泣いた日もあった。なんなら、視野狭窄のせいで自由に移動ができなくて泣くことなんて今でもある。

 悔しいなぁ、少年。わかるよ。学校での目標も見たよ。「病気を言い訳にしない」って言えるの、すごく強いよ。でも、辛いときだってあるよね。強くいられない時だってあるよね。「つらい」って感じてる自分も、自分が言ったことを守れてないみたいで嫌だよね。わかるよ。私もそうだった。

 少年。助けてもらうんだ。誰も1人では立っていられないから。どんな人だって、君のお父さんも、お母さんも、学校の先生も、主治医の先生も、お世話になった看護師さんたちも、リハビリの先生たちも、みんな1人じゃずっと強くはいられない。だから、助けてほしいときは「助けて!」ってちゃんと言えることも大切だよ。

 それから、「何をしてもらいたいか」をできるだけ具体的に言葉にすること。病気によって専門のお医者さんがいるように、それぞれが得意なことで君をサポートしてくれるはずだ。

 少年、夢はある?好きなことはある?君を支えてくれる人はみんな、君が幸せであることが嬉しいよ。君が元気に笑って生きているのがうれしい。だから、「言い訳にしない」ことは大切だけど、辛い時は「つらい」「助けて」って言うんだぞ。きっと助けてくれるから。

 最後に、頭のモヤモヤについて。私も主治医に聞いたことがあるよ。「若いから、なんとも言えない」って答えだった。治る可能性もゼロじゃないってことだった。お医者さんも、奇跡を信じてるんだよ。数字は、ただの数字だ。君も私もまだ若い。
 私の場合は、幸いある程度は回復した(と思う)。苦しかったけど、夢を叶えるためにみんなに助けてもらいながら学び続けることができている。大学院に進学した今も、たくさんの人に助けてもらいながら頑張れている。君にもきっとできる。大丈夫。助けてくれる人がいる間に、少しずつ自分のベストを更新していくんだ。頑張れ。私も頑張るから。

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