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今昔物語現代考

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今昔物語27巻の怪異談を私の視点から自己流に再考したいと思います。よろしく。
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2022年6月の記事一覧

巻27第3話 桃園柱穴指出児手招人語 第三

今昔、桃園と云は、今の世尊寺也。本は寺にも無くて有ける時に、西の宮の左の大臣1)なむ住み給ける。

其の時に、寝殿の辰巳の母屋の柱に、木の節の穴開たりけり。夜に成れば、其の木の節の穴より、小さき児の手を差出て人を招く事なむ有ける。

大臣、此れを聞給て、糸奇異(あさまし)く怪び驚て、其の穴の上に経を結付奉たりけれども、尚招ければ、仏を懸奉たりけれども、招く事尚止まざりけり。此く様々すれども、敢て止

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巻27第2話 川原院融左大臣霊宇陀院見給語 第二

今昔、川原の院1)は融の左大臣の造て住給ける家也。陸奥国の塩竈の形を造て、潮の水を汲入て、池に湛(たた)へたりけり。様々に微妙く可咲き事の限を造て住給けるを、其の大臣失て後は、其の子孫にて有ける人の宇陀の院2)に奉たりける也。

然れば、宇陀の院、其の川原の院に住せ給ける時に、醍醐の天皇は御子に御せば、度々行幸有て微妙かりけり。

然て、院の住せ給ける時に、夜半許に、西の台の塗籠を開て、人のそよめ

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巻27第1話 三条東洞院鬼殿霊語

今昔、此の三条よりは北、東の洞院よりは東の角は、鬼殿と云ふ所也。其の所に霊有けり。

其の霊は、昔し未だ此の京に京移も無かりける時、其の三条東の洞院の鬼殿の跡に、大なる松の木有けり。其の辺を男(をのこ)の馬に乗りて、胡録負て行(ある)き過ける程に、俄に雷電霹靂して、雨痛く降ければ、其の男、否(え)過ぎずして、馬より下て、自ら馬を引へて、其の松の木の本に居たりける程に、雷落懸りて、其の男をも馬をも蹴

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