江戸川乱歩傑作集3
江戸川乱歩傑作集3
『 芋虫 』
2015年 8月10日
著者 江戸川乱歩
発行者 太田歳子
発行所 リブレ出版株式会社
印刷所 株式会社 光邦
装幀 斉藤麻実子
企画編集 入江恵子
芋虫 7
踊る一寸法師 35
虫 53
猛獣 123
レビュー団の女王 125
うごめく触手 131
執念の花束 137
鏡の裏 145
悪魔の曲線 151
地底の猛獣 156
天地晦冥 163
地底の恋 168
情痴の極 172
雪女郎 175
足のある風船 179
冷たい手首 184
蜘蛛娘 188
めくら湯 194
真珠夫人 198
その他16編。
自註自解より。
『芋虫』は、「新青年」の昭和四年一月号に発表された。
雑誌「改造」に頼まれて書いたものだが、当時の時勢により、断られたのでした。
だが、作家としては、作品は我が子も同然、世の中に出してあげたいのが親心。なんぼ悔しかったか知れません。
彼は、単にエロスを描きたい訳ではなかったと思うのです。人は時には、鬼や犬畜生にもなりえるのだと、そして、人間にある慈悲の心を描きたかったのではないだろうか?
究極の愛とエロス。生きていると言うことは、汗にまみれ、泥にまみれ、時には邪となり、綺麗な玉のような心持ちではいられないのです。
取り澄ました人の顔の奥に潜む醜い顔を炙り出し、傲慢な人間を諫めたいのではないだろうか?
所謂、人には二面性があるように。
まだ、『芋虫』と、『虫』しか読んでいませんが、江戸川乱歩の作品を見ていると、戦後の見せ物小屋なるを思い出すのです。
いつ見たのか忘れてしまいましたが、お花見やお祭りなどがあると、見せ物小屋が立つのでした。
所謂、奇形児などが檻に入れられ見せ物となるのです。そうして、日銭を稼いでいたのでしょう。見た目は奇形であっても打ちなる心は人間なのです。
親にしてみれば、奇形であっても我が子。私の想像ですが、村々を周り、町々を周りながら、そのような子供は、親から離れ見せ物小屋に売られていったのではないかと。
私には、彼の見た世界への挑戦のように思うのです。奇異な物見たさの人間の性を。日常からの非日常を私達は何処かで憧れているのではないでしょうか。
本を読み終わり、三次元に戻ると、孫の声が聞こえてくるのです。
精神の混沌の江戸川乱歩の世界で、すっかり疲れてしまった身体をお風呂に沈め、頭の中のぼんやりした物を鎮めるのでした。
小説にリアルを表現する為に、乱歩があれこれ思考する様子が浮かぶのです。それらの矛盾という穴目を一つひとつ塞いでいく作業は楽しいものかも知れません。
そして、完成した時に、彼はニヤリと笑うでせう。いや、笑ったでせう。
乱歩のどや顔を見る気がしました。
そして、私は、戦後の間もない日本の香りをそこはかとなく懐かしく、郷愁の念に駆られるのでした。
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