62 優勝
62【優勝】
僧侶をはじめ、色々な人に救われたあの日から、僕は生き方が変わったような気がした。
結果は出したいけれど、それがすべてではない。
やりたくないことは、やらない。
そのために、やりたくないことをするのだ。
やりたいことだけをやる。
そのために、やりたくないことをするのだ。
ここが逆転してはいけない。
もともと、僕は潔癖である。
ネタの中に、安易に時事ネタを入れるのが嫌いである。
一時、野々村議員のマネをして、泣けば、なんでもウケる空気の時があった。
僕はコーナーとかトークの時ならいいと思うが、ネタに入れるのは嫌だと頑なに思っていた。
そんなことは、他の芸人に任せればいい。
R1ぐらんぷりの一回戦敗退から、二ヶ月ほど後に、よしもとの中でピン芸人を集めた大会が行われた。
僕が早々と落ちただけで、まだR1は続いていた頃だったと思う。
僕は、未来の優勝者やファイナリストなど、劇場のツワモノたちの中で優勝した。
自信になったことは言うまでもないし、何より嬉しかったことがある。
客席で観に来ていた彼女から聞いた。
お客さんが優勝してあんなに大きな音で拍手してるのを聞いたことがないし、幕が閉まってから芸人が拍手してるのも客席に聞こえたと。
嬉しかった。
みんな、僕が一回戦で落ちてたという流れがあって、判官贔屓で優勝できたのだろう。
なんせ、そうそうたるメンバーである。
僕の実力は、そんなに大したことはなかったということは、きちんと付け加えておこう。
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