美容室の怪14
「あなたは自分がやったことがわかってるのですか?」
検察官の問いに、被告は俯いたままだった。
「27歳の前途有望な何の罪もないOLを殺したのですよ?」
裁判所を異様な空気が包んだ。
すすり泣く声が傍聴席から聞こえる。
被告は、声を出した。
「仕方が………なかったんです……こうするしか、なかったんです」
検察官は、敢えて黙って続きを待った。
弁護士が口を挟む。「裁判長、被告は精神耗弱状態であり……」
その声を再び遮ったのは被告自身だった。泣いているのかと思った鳴き声から、こらえきれずに笑い出したのだ。
「仕方がなかったから、殺しまくりボンバーや!はっはっはあっ!!あーっはあーっはあーっ!」
裁判所の中を奇妙な空気が支配した。
橋本よしえの高笑いは続く。
「殺すしかなかったから、ナイフで刺しまくりボンバーや!はあーっはっはっはっはっ!」
事件の新聞記事を読んでいる傍聴席の石野洋子は、ただただ呆然としていた。
“美容院【ハリセーヌ】の従業員、白田まゆみ(27歳)と同美容院店主、鈴木美佐子(52歳)をナイフでメッタ刺しにした容疑者、橋本よしえ(27歳)は、犯行現場で警察官により逮捕。調べに対し、橋本容疑者は『殺さなければ殺されていた』などと訳の分からないことを供述している様子”
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