美容室の怪12

その後のことは、うっすらとしか覚えていない。

パニックになったわたしを見て、イケメンの山田さんは介抱してくれ、話を聞いてくれたが、支離滅裂なわたしの話に、不可解な顔をしていたのをわたしは見逃さなかった。

優しさはあっても、どうしようもないこともあるのだ。

わたしだって、逆の立場で、こんな奇妙な話を聞かされたら、信じられないだろう。

ピザ屋に扮した白田さんは、一体、何をしに来たのだろう。

本当にハリセンでわたしを叩くのが目的なのだろうか。

元カレが言ってたように、本当にわたしがハリセンで頭を叩かせたら、もう鈴木さんも、白田さんも、わたしの前に二度と現れないのだろうか。

でも、わたしは、もう彼女たち二人の姿を見ただけで卒倒しそうになるのだ。

とてもじゃないけれど、そんな勇気はない。

家にまで来られ、職場にまで来られるほど、わたしが一体何をしたというのだろう。

まるで、借金地獄の人間がヤミ金に手を出して首が回らなくなっている様子と同じではないか!

わたしは、少し安いという理由だけで、美容院に行っただけだというのに!!

そしたら、こんな恐怖を味わうことになるなんて。

わたしは途方に暮れていた。

ピザ屋の配達員に扮した白田さんが現れてから、一ヶ月間、わたしは、会社にきちんと勤めていた。

げっそりと痩せ、目にクマができ、職場の人に心配されながら、働いた。

一ヶ月間、何もなかったことに、少し落ち着きを取り戻したころである。

ピーンポーン

ピーンポーン

自宅のチャイムが鳴るたびに、わたしの心臓は爆発しそうになる。

わたしは、深呼吸してから、インターホンの画面を開いた。

画面に映ったのは、洋子だった。

身体から力が抜けた。

洋子!会いたかった!


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