【30秒小説】運動しなさい!


 私は小柄な女だが、太った兄がいる。
 体重はざっと3桁は超えているだろう。
 今日の運動しない兄に怒りを覚える。
 なので今回は叱るようにした。
 兄貴の部屋をどんどんと叩き、部屋の中に入る。
 淡々とFPSゲーム系をやっていたのを見て、私の限界がきた。
 
「兄貴! もういい加減にしな! そろそろ痩せないと病気で死んじゃうよ!」
「……俺、運動嫌いなんだよね。小さい頃、運動でいじめられたから」
「それは気の毒だけど、とりあえず、食生活でも変えな?」
「……つい、脂っこいものを欲してしまう。あとは炭酸飲料系も」
 
 私は呆れて言葉も言えない。怒りが加速する。
 
「どりゃぁぁぁぁ! 言い訳ばかりしない! 私が運動することをサポートするから、兄貴はゆっくりと歩けばいいよ」

「本当……?」兄貴は子供のように、とぼけて言う。
 
「そうよ、だから今から運動しましょう!」
「でも運動すると俺が俺じゃない感じがして怖いな」
「大丈夫! 運動すればストレス発散できるよ!」
「わかった、運動してみるよ。食事制限もできるだけする」
 
 すんなり、受け入れた兄貴。私は意外だった。
 
「こんな素直に痩せる努力してくれるとは思わなかった。ありがとう、世界で1番最高の兄貴だな!」

「大丈夫? 俺、ストレス溜まるとイライラしやすいんだ。もし何かあったら……」

 「大丈夫、大丈夫! そのときは止めるからね。さあさあ今から行きましょうー」



 

 

「続いてのニュースです。一昨日、午後4時37分ごろ。華原紗奈かはらさなさん(16歳)が首を絞められ死亡しました」
 
 女性ニュースキャスターは淡々と話す。
 
「被害者の兄、フリーター華原琢磨かはらたくま容疑者(22歳)を現行犯逮捕しました」
 
 彼女の声が全国に放送される。

 「動機は『妹に誘われて運動してたら、ストレスが溜まり、殺人欲が抑えられず、殺害した』のことです」

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