桜前線異常なし！

 　「桜前線異常なし！」
　毎年この時期になると春軍冬軍による激しい戦争が我々の知らないところで行われている。
この戦争を春軍は春季闘争、略して春闘と呼んでいる。
各地に勢力を張る冬軍団に対し南からやって来た桜軍団が北へ北へと攻め上る。
戦いの最前線は桜前線と呼ばれ１日約２０キロの速さで占領地を拡大していく。
特に気温が上昇した日は進撃速度を増し、電撃的に日本列島を桜色に染めていく。
また通常桜軍団は最初に南九州に上陸し橋頭堡を築いてから北上するのだが、時としてかえる飛び作戦と実行。敵の後背地である関東地方などに突如現れ冬軍団に奇襲を仕掛けることもある。
南西から北東に向かって進撃する桜軍団に対し冬軍団は山岳地などの寒冷な場所に強固な陣地を築城し決死の抵抗を試みる。
桜軍団は頑強に抵抗する冬軍団に対し焦らずじっくりと包囲殲滅作戦を展開する。
時に冬軍団は季節外れのみぞれなどによって反撃を試みるも三寒四温。桜軍団の春風攻撃によってじりじりと勢力を後退させてゆく。
やがて戦場は海を越えて北海道へ。

　５月中旬

　冬軍団最後の拠点根室も開花したエゾヤマザクラに囲まれ風前の灯となっていた。
かつてはナポレオンをも斥けた歴然の勇将冬将軍も、偵察機が撮影した桜色に染まった日本列島の写真を見て戦意を喪失。
ついに降伏を決意した。
冬将軍は両軍の間に常設されているホットライン、通称桜回線を使って桜軍団司令官に降伏の意志を伝えた。
降伏した冬将軍は妻である雪女と僅かな供回りを連れ、風の又三郎の起こした大風に乗って遥か北極圏へと退却してゆく。
「アイシャルリターン」と言いながら……。

 初桜勝鬨上げよ春将軍

桜軍団の軍歌です

たらはかにさんのこちらの企画に参加します🙇