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長崎の創作童話(子ども劇&紙芝居用) 荒治と魔法のギヤマン

長崎の童話(劇&紙芝居用)  荒治と魔法のギヤマン

荒治は小学6年生の男の子。荒治の両親は7年前に交通事故で死んでいない。今はカツヨばあちゃんと妹あられと3人暮らしだ。幼なじみのゴリちゃん、マルメくんとは大の仲良し。いつもララ美ちゃんという同級生の女の子と一緒に4人で遊び、行動している。

ある日、カツヨばあちゃんの晩酌用のギヤマンのびんを割ってしまった荒治。こっそり捨てようとすると中から「捨てたらできん!」という不気味な声が聞こえた。そこで荒治はギヤマンの破片を接着剤でくっつけると、今度は「こすってみんね!」という声が。おそるおそる荒治がギヤマンの表面をこすってみると、突然、煙がわき出し、中からほろ酔いの老魔女「魔ババ」が現れた。まるでアラジンと魔法のランプだ。

魔ババは「ワシの願いば3日以内に叶えんとお前が今度はギヤマンの中に閉じ込められるばい」と荒治をおどした。その魔ババの願いとは「7年前に疫病で死んだ孫のちび魔るにもう一度会わせてくれんね」というものだった。

どうしたらいいの? 途方に暮れた荒治はカツヨばあちゃんに相談するが、「なんば寝ぼけとると。夢かおとぎ話ね? そいに魔人なら不死身やろが。疫病で死ぬもんね」と相手にされない。そこで翌日学校の教室でゴリちゃん、マルメくん、らら美ちゃんに打ち明ける。3人は荒治の不思議な話に最初驚いたが、荒治の話を信じてくれた。

さっそく4人のちび魔る探しが始まった。死んだ魔人の子どもをどうやって蘇らせるか? いったいそんなことができるのか? 時間がないなか4人は悩みながら、知恵を絞り出し合った。

1日目。ゴリちゃんの発案で、霊能力があるという噂の怪しい占い師の女に相談してみることに。だが、4人は彼女にお小遣いを全部巻き上げられた挙げ句、「ちび魔るは無限地獄にいるので蘇らない」と断言されてしまう。

2日目。マルメくんの発案で、タイムトラベルマシンを開発したと噂のなんじゃもんじゃ博士に相談。マシンで7年前に行ってちび魔るを連れてこようと計画する。しかし、過去に出発しようとした途端マシントラブルが起きて、マシンは炎上、あえなく失敗に終わった。

2度の失敗を知った魔ババはもうカンカンだ。荒治に向かって「あと一日でお前もギヤマンの魔人になるとぞ!」とおどし、怒り狂う。恐怖に全身が震える荒治だった。

2日目の夜。流星群が見えるというニュースを聞きつけたらら美ちゃんの発案で、「こうなったら流れ星にお願ばいしよう!」ということに。しかしその日の夜は曇り空で、集まった近所の公園から星は見えなかった。がっかりした4人はそのまましおしおと解散した。

3日目の明け方。あたりはまだほの暗い。不安と恐怖でなかなか寝つけない荒治。トイレに立った荒治は小さな窓から流れ星を偶然見つけて、急いで3度願いを繰り返す。すると突然家の庭が白い煙で覆われ、ちび魔るの姿が現われたのだ。「やった!」、荒治は急いでギヤマンをこすって魔ババを呼び出し、ちび魔ると再会させることに成功したのだった。

孫と7年ぶりの再会した魔ババ。荒治は「魔人でも疫病で死ぬと? 不死身じゃなかと?」と魔ババに向かって聞いてみた。「人間界の疫病にはかからんばってん、こん子は魔人界のおそろしいか疫病にかかったとさ」と涙をこぼしながら答えるのだった。

ちび魔ると感激の再会を果たした魔ババは、「お前がギヤマンの中に閉じ込められることはもうない。その代わりお礼ばしてやる」と、荒治のお父さんとお母さんを天国から呼び寄せてくれた。実は魔人界では「死んだ人間を蘇らせることはできるが、けっして身内を蘇らせてはならない」という厳しい掟があったのだ。

荒治は妹のあられを起こし、「おばあちゃんには内緒だよ」と言って、親子4人の短いながらも楽しい時間を過ごした。お父さんとお母さんは荒治とあられを優しく抱きしめ、「これからどんなことがあっても、ふたりで乗り越えていくとよ。わたしたちはいつでもお空の上から見守っているけんね」とささやいた。荒治は涙をためてうなずいた。あられも泣きながら「うん!」と返事をした。しばらくしてお父さんとお母さんの姿はだんだん薄くなり消えていった。

辺りはすっかり朝の明るい光が差し込んできていた。荒治はギヤマンのびんの魔ババに向かって「ありがとう」とつぶやき感謝しながら、さっそく学校で今朝の話をゴリちゃん、マルメくん、らら美ちゃんにしなければと思った。


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