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京都への上京 3日目 ②〜ロードバイクでめぐる京都への旅〜 広島編


「ひとり旅・・・・・いいかもしれませんね」

秋川滝美 「ひとり旅日和」より

はじめに

 京都への上京と名付けられた今回の旅。ネーミングセンスがこの上なくダサいとの評価を周りからは受けたのだが、自分自身としてはかなり気に入っている。この旅は自転車で行う参勤交代なのである(自分の中では)。まあ、修学旅行でまわれなかった観光地を巡り、ロードバイクで旅をしてみたかっただけなのだが。全行程は長崎から京都へ行き、京都から愛媛県は今治市までを10日間で走破するというもの。ただし条件があり以下の3つを最低条件とした。
・基本的にホテル泊(初めての自転車旅でキャンプや野宿は大変だと判断したため)
・雨などが降った場合無理をしない(危険でないかつ楽しむことが前提のため輪行もガンガン行って行く)
・GARMINで走行記録を取るのはもちろん、感じたことなどはすぐにメモしてnoteに後で楽にまとめることができるようにする(今書いているのはメモ帳に書かれた断片的な体験記録をもとに執筆している)
 ガチの方々からすると腑抜けもいいところなのだが、今回はあくまで初めての自転車旅行かつひとり旅であり、楽しむことを大前提としているためご容赦願いたい。

 装備に関しては準備編をご参照願いたい。持って行ったもののリンクをできるだけ貼っているのでご参考までに。

 また一日目・二日目のほうも更新していますのでそちらもぜひ。

では、3日目の②へ


雨の庭園

 依然として降り続いている雨。天気予報ではどうやらずっと一日中雨予報らしい。そんな時でも訪れたい場所がある。むしろ雨だからこそ訪れるに相応しい場所がある。それは日本庭園である。
新海誠監督の作品の中で「君の名は」の一つ前の作品に「言の葉の庭」というものがある。その物語は靴職人を目指す高校生が雨の庭園で不思議な女性と出会うことから始まる。互いの秘密と傷を隠しながら惹かれ合う二人が織り成す切ない恋の物語。ぜひ心温まる作品なので見て欲しい。

ということで雨の中やってきたのは広島の縮景園。


 
 縮景園は初代広島藩主である浅野長晟(あさのながあきら)が広島城に入城した翌年に別邸として作られた庭園のようだ。その後7代藩主の浅野重晟(あさのしげあきら)が8年かけ大改修を行い現在のかたちに至ったようだ。

現在では美術館が併設されており、庭園を見ながらお茶できるようだ。お茶はしなくてよさそうなので、入場料を払っていざ中へ。


見取り図はこのような感じ。かなり広々としている。

 入口を入ってすぐ横に受付があり、入園料を払う。見た限りでは客らしい客もおらず貸切状態だった。
まっすぐ歩いていくと先ず見えてくるのは、

明治天皇が宿泊した清風館。裏には縁側があり、池が見渡せるようになっている。こんなところで本を読める生活を送れたらどんなことか、と夢想してみる。やはり読書家にとって縁側は特別な場所なのかもしれない。

 池の近くにも人がいないので静かに庭園を回れそうである。


池の真ん中に石造りの橋がみえる。どうやら渡れはしないようだ。

対岸の小さな祠月を眺め風景を楽しむための明月亭。こちらも非常に美しい作りとなっている。夕日を楽しむ夕照庵(せきしょうあん)紅葉の季節だと紅葉が夕日に映えてさぞかし綺麗なのだろう。


 庭園を1周したことで、心は満たされたが腹は満たされない。どうやら美しい風景では腹の虫は治ってくれないようだ。食べられるところを庭園周辺で探すと広島風のお好み焼き屋があるようだ。せっかく大阪も通ることになるので2種類のお好み焼きの比較もしておきたいところではあった。ということで広島風お好み焼きを提供しているお店へ。

 やってきたのは「花やしき」というお店。お店の中にはカウンター席とテーブル席。テーブル席からは庭園が見えそうで見えなかった。テーブルには鉄板が用意されていたが流石にランチでは鉄板を使った提供はやっていないようだ。注文したのはもちろんお好み焼き。それも一番量が多そうなものを選択した。ニュースキャスターの心地いい声を聞きながら待っていると、

注文したのは花屋敷デラックス


おお。大阪風(?)お好み焼きとは全然違う。まずは見た目。明らかに厚い。そして味。これはお好み焼きというか目玉焼きを使ったオムそばに近い。しかし下の麺自体を軽く固めているため食べ方自体はお好み焼きである。なるほどこれが広島風お好み焼きか。非常に美味だ。
お腹も膨れたところで新幹線で倉敷市へと向かう。


旅には運と、度胸が必要である。

 広島駅まで戻り、新幹線で倉敷まで。新幹線に乗るのは修学旅行以来であり、妙な高揚感がある。以前大型の荷物を新幹線に乗せる際には各号車の最前列か最後列を予約する必要があることをつむりさんのブログで拝見した。当然指定席の最後列をとった。
どうやら新幹線一本では行けないようなので岡山駅まで向かい、そこから倉敷へと向かう電車に乗り換える。

ありがとう、竜也。行ってくるぜ。

 なぜ京都に向かっているのに逆方向に戻るのかと思われる方もおられるだろう。お答えしよう。どうしても倉敷市の美観地区へと行ってみたかったのだ。どこか大正ロマンを感じさせるあの町に一度でいいから行ってみたいと常々思っていた。そのため少々戻ることになっても倉敷市へと向かうことにしたのである。

乗り換えを含め、約45分ほどで倉敷市へ。自転車ではあれほど時間がかかるのに、やはり機械の力は偉大だと思い知らされる。


ホテルへ向かい、チェックインを行う。ホテルのフロントにはフルーツジュースが用意されていた。冷えて疲れた体に染み渡る。落ち着いてきたところでゆっくりしたい、という誘惑をなんとか振り切り美観地区へ。どうやらホテルの目の前が美観地区のようだ。
信号を渡れば(渡る前から)そこには大正浪漫が漂っている。

白い漆喰に瓦。ほぼ全てのお店が統一されている。

非常に綺麗な街並みである。川辺には石垣、路面は石畳、建物は漆喰に瓦の日本家屋もあれば西洋式の窓を備え付けた家屋もある。あぁ、これぞ和洋折衷な街並みだ。

 これは洋風の煉瓦造りの建物。元は紡績関係の工場だったようだ。現在では蔦が生い茂るのでアイビー・スクエアという名を冠しているらしいが、残念ながら訪れた時は蔦の葉はひとつもなかった。またモネの蓮も見ることは叶わなかった。だがそれなしでもかつての工場跡というだけで歴史的価値があり、見るには飽きないと思う。

 こちらは和風の家屋が立ち並んでいる通り。当然リノベーションはなされているが、古き良き街並みを残している。現在はカフェやお店が立ち並んでいる。
お土産が並んでいるためせっかくなので覗いていくことに。岡山といえばデニム、ということで近くのデニムを扱っているお店へ。

まずはスヌーピーのお店へ。ワオ。高い。エプロンやバッグなどがデニムで作られているがとんでもなく高い。早々に撤退し別のお店へ。
こちらもさまざまなデニム生地を使った商品が並んでいるが、中でも特にキャスケットが可愛いい。しかし先ほどと同様に当然ながらお値段は全然可愛くない。やはり高い。
自転車乗りは金銭感覚がおかしいとよく言われるのだが、それでも高い。帽子一つが1万5千円。うーむ。他の店も回っては見るがどのお店も軒並み高い。

どうしようかと悩んでいると、お店の前に鬼太郎がいる店を発見。ここだとリーズナブルな商品があるはずだ、そんな風に鬼太郎が囁いてくれた気がした。
お店の中にはさまざまなデニム商品が並んでいる。もちろんゲゲゲの鬼太郎のキャラのグッズもたくさんある。そこで見つけたものが、

デニムを使ったサコッシュ。私が使っているcanyonのサコッシュは非常に気に入っていたのだが、ボタンが取れかかっているため代替品を探していたところではあった。しかもジップが付いていて中身が飛び出さなようになっている。即決でレジに向かう。

と行きたかったのだが、ブックカバーを見つけてしまった。読書が好きな私の趣味の一つは読書グッズ集めである。
イラストは、コジマナオコさん、が描かれたものらしいのだが非常に可愛らしい女性が描かれている。森見登美彦著の「四畳半シリーズ」、「新訳 走れメロス」、「夜は短し歩けよ乙女」などのイラストを描かれている中村佑介さんを彷彿とさせるイラストだ。たとえ道中荷物になると分かっていても買ってしまった。自転車はどこへでも行けるが本は開けば知らない場所へと連れていってくれるのだ。

時刻は16時半。ご飯の前に倉敷市を一望できる高台にあるという阿智神社へ。どうやらかなり見晴らしが良いようだ。社務所が閉まってしまう前に急いで坂を登る。


何度もくねくねした上りの道を登ることに。曲がり角の階段の度にここが、と思うのだがその先には更なる階段が見えるのみ。シューズはビィンディングシューズのため歩きづらい。それでも何とか頂上へ。

境内は広々とした空間が広がっていた。お参りを済ませ、境内を散策していると倉敷市を一望できそうな建物を発見。
中に入ってみると、

美観地区を一望できる。建物内はベンチとテーブルがあり、ゆっくりと休憩ができるようだ。すでに写真でお気づきかもしれないが、この建物はただの休憩所ではなく、さまざまな凝った品々が置かれている。

一つは干支と方位が描かれたもの。犬がなぜかダルメシアンなのが気になるところだが、かなり大きく、各動物も色彩豊かだ。
二つ目は算術の問題。江戸時代の頃、算術や算学で名を馳せたもしくは得意だった人々はこぞって自分が考えた問題を神社に奉納するという風習があった。以前松山の道後温泉近くに構える伊佐爾波神社に訪れた際にもさまざまな問題が奉納されていたのを目にした。いつの時代でも科学の心は人々の中に宿っているという証拠なのかもしれない。奉納をされた方が「藤門の二天才」と呼ばれていたそうなので、阿智神社の名物「阿知の藤」を見てそのまま降るというルートをとる。

アケボノフジという品種の中では日本一の巨木であるようだ。時期になると立派な藤棚を見れるようなので、ぜひ訪れてみてほしい。

 神社の境内を出たのが17時前。少し夕飯には早いが、この後にお風呂でゆっくりすることを考えてこの時間から取ることにした。ご飯どころを探しながら商店街を散策していると何やら行列を発見。

どうやら「かっぱ」という店名の洋食屋さんのようだ。夕方の開店は17時から。まさにグッドタイミング。運が良かった。調べてみるとかなりの有名店のようだ。そしてこのような店を訪れるときに必要なのが、度胸である。ここで逡巡して他の店も見てから、などと思っているとせっかくのタイミングの逃してしまうことのなる。たとえそのとき1人だったとしても好機は掴んだら離すべきではないのだ。

待ち時間0で店内へ。これぞお1人様の特権である。大人数で行くとテーブル席が空くまで待つことになるが、1人だとカウンター席に座ることが可能。美味しいご飯が待ち0で食べられるとはなんたる僥倖。

せっかく美味しいそうな洋食屋さんにきたのに制限をかけるのは勿体無い。ということで私が注文したのは、若鶏のバター焼(ハーフサイズ)とかっぱセットのAセット。そしてライス大(本当はライス中を2皿注文したのだが、大1皿の値段に変更されていた)。
まずはバター焼から。揚げ焼された鶏肉にホワイトソースのようにしっかりと味がついたチーズがかかっている。非常に美味しい。鶏肉に味付けされた塩味とチーズのまろやかな甘味がマッチしている。

次にAセット。メニュー表にはハンバーグと記載がされているが、メンチカツに近いくらいお肉を感じる。メンチカツの噛めばホクホクと口の中で解ける食感といえばいいのか、それが衣なしで直に体感できる。

なかでも一番の衝撃はササミカツである。ササミカツがササミカツではない。全くパサパサしていないのだ。すごくしっとりとしている。そしてデミグラスソースと非常に相性がいい。デミグラスソースは普通のものより揚げ物によりマッチした味わいがして非常に美味しかった。

ぜひ、倉敷市を訪れた際には行ってみてほしい。だが人気店なのでタイミングを逃すと人で店の外が溢れかえるので注意が必要である。


ホテルに帰り、お待ちかねの大浴場である。ゆっくりと入浴を済ませ奥に行ってみると、そこにはマッサージチェアが鎮座していた。どうやら無料で利用できるようだ。

なかなかどこの銭湯にも置かれていないフルーツ牛乳を飲みながら、読書を嗜む。もちろんマッサージ中にだ。あぁこれで就寝できるのなら、少々値が張ってもいい。そう思わせる1日だった。しかし自転車に乗っていないのでタイトル詐欺である。明日は晴れ予報なので乗り回していこう。


引用した小説

 人見知りの社会人女性がひとり旅の様子を語りながら物語は進行する。旅を通じて癒され、徐々に成長し何よりひとり旅にハマっていくというお一人様ストーリー。ひとり旅を始める不安、それを乗り越えた先にある楽しみ、失敗しても楽しむ精神。そんなひとり旅をすると感じる心の機微を見事に描いている。また食レポが上手なので見習いたい。ぜひ、ご一読を。

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