見出し画像

005.東京芸術大学大学院映像研究科馬車道校舎(旧富士銀行横浜支店)

≪3.生糸貿易をささえた横浜の洋館・建造物006/本町通り周辺≫
*本町通りに面した旧富士銀行横浜支店。交差点の対角が生糸検査所、その右に帝産倉庫が広がるという、生糸貿易最盛期には中心的なビジネス街のロケーションにあった。
 
 
 馬車道大津ビルのとなり、馬車道と本町通りの角に面して建つのが旧富士銀行の横浜支店です。横浜に残されている洋館は銀行の店舗も多いのですが、これはしっかりした石造りで、戦災で焼けずに残ったためです。多くがこの本町通りに面しています。
銀行は長い歴史の中で、合従連衡も多く、その際に名称が変更されるために、どの銀行がどの銀行を受け継いでいるのか名称を聞いただけではなかなか継続的なイメージを持ちにくいのですが、ここは銀行ではなくなっている珍しいケースです。
 
完成したのは昭和4(1929)年で、安田銀行横浜支店として建てられました。
設計は、安田銀行の営繕課によるもので同行の店舗の基準設計のようです。同様のスタイルの支店が小樽、箱館、本所(東京)、大阪、神戸など各地に建てられています。
 安田銀行は、戦後の昭和23(1948)年に安田財閥の解体で富士銀行に名称を変更しましたが、この店舗は銀行として存続、昭和29(1954)年に増築されていいます。
安田銀行から富士銀行に変わったのは経営母体の交代による名称だけで、変更後も長く富士銀行の名称で業務を継続してきましたが、平成12(2000)年に第一勧銀、日本興業銀行と合併して、みずほ銀行と名前を変えています。
 この合併に際して、銀行業務が関内地区のビルに移転してみずほ銀行横浜中央支店に店名が変更されたことから、建造物を残したいという横浜市が平成14年に購入、横浜市の所有になって名称から「銀行」がなくなりました。
 その後、平成17(2005)年に横浜市は東京芸術大学大学院映像研究科の誘致に成功し、現在は同学科の馬車道校舎として使用されています。

正面玄関の装飾。石の重厚さに合わせて落ち着いたデザインになっています。
いまは、東京芸術大学の看板がかけられている。

外観は、鉄筋コンクリート2階建てながら、石積みの表面を滑らかにせず、石材の凹凸を目だたせたルスティカ積み(ルネサンス期のイタリアなどで良く用いられた技法)と呼ばれるデザインで,荒々しく重量感のある建物に仕上がっています。いかにも銀行らしい建物でありながら大学の研究室というのは、一瞬えっと思う、あたかもだまし絵のようです。

石材の凹凸を生かしたデザインが、石に質感を出していかにも銀行らしい重厚感を醸しています。

 本町通りに面した側面と、馬車道に面した側面は、幅は若干異なるのですが、ともに4柱分のオーダー(通し柱)があり、間に挟まっている上部の円形の縦長の窓とマッチして、何とも落ち着きの良い安心感を醸しています。
 現在、内部は見られませんが、平成12年まで銀行として使用されていただけにきちんと整備されていて、使用にはまったく問題はないようです。
●所在地:横浜市中区本町4丁目44

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?