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柱はなぜ中太り(エンタシス)なのか?

                               法隆寺

古代の社寺の構造で不思議とされているのが、ギリシアの神殿と同じ構造をもっているというなぞです。
法隆寺も、薬師寺も、柱は同じ太さでまっすぐずんどうに作られているわけではありません。中間あたりが少し太目になっていて、天地に行くにしたがって細くなるという構造になっているのです。この構造をエンタシスと言います。
一見、均一の太さでつくられているように見えるのですが、よく見ると、上下の真ん中から少し下あたりが膨らんでいるのです。これは、ギリシアの神殿などの柱に用いられたエンタシスという形です。
丈夫で、見た目に安定して見られる、そして、目の高さが一番太く、上下に行くにしたがって細くすることで、柱を長く見せる=偉大さを印象付けたい、などの効果があるために考えられたと言われていますが、実はどうしてギリシアで使われた形式が、奈良の寺社で用いられているのかよくわからないそうです。
もしギリシアから伝わってきたとすれば、その経路の可能性のある中国、韓国にもあると考えられますが、この形は、ギリシアと日本の間で、インドにもどこにもないそうなのです。
飛鳥人の独自の工夫なのか、それとも何らかの方法でギリシアの柱が伝播して模倣したのか、詳細は不明なのです。
洋の東西を離れて、もし独自に発見しているとしたら、どういう経緯でこの形が発想されたのか、知りたいところです。エンタシスの謎――歴史は技術のロマンにもあふれています。

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