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032.横浜市発展記念館・横浜ユーラシア文化館(旧横浜市外電話局)

≪3.生糸貿易をささえた横浜の洋館・建造物028/日本大通り≫
*県庁舎側からの交差点側から見た光景。横浜市営地下鉄「日本大通り駅」の上にあります。1階の窓が半円アーチで、2~4階は四角、このコントラストが独特の雰囲気をかもしています。
 
 ■一つのビルを使いわけ
 横浜市発展記念館と横浜ユーラシア文化館は、一つの建物に入っている施設です。横浜情報文化センターのとなりにあります。建物がくっついているので、一つと思われがちですが2つのビルが背中合わせにあるものです。
 昭和4(1929)年に旧横浜市外電話局として建てられたもので、鉄筋コンクリート造り、地上4階建て、地下1階。この地下に、みなとみらい線日本大通り駅ができました。
 この建物は、もともと横浜中央電話局本局の市外電話の交換所と事務室として建てられたものでした。そもそも日本で電話サービスが始まったのは明治23(1890)年、東京-横浜間を結んだものでした。
 
 生糸貿易で全国の生糸が集まる横浜では市外通話が多く電話交換の需要は、明治末から大正時代にかけて、ウナギ上りに増えていました。当時、電話をしようとすれば、すべて交換士を通して線をつないでもらうしかありませんでした。
 市外電話の交換所というのはまた意味があって、当初、電話をかけるときは受話器を取って交換士を呼び出し、接続する相手の番号を伝えて繋いでもらいました。しかしそれでは電話の普及とともに多数の交換士が必要になります。そこで、自動的に接続できる自動交換機が開発され、日本では関東大震災後の復興を機に、順次導入されていきました。
 しかしそれも限界があり、かける相手先によって料金などの複雑な計算が必要になることから、当初自動交換機が導入されたのは首都圏の市内通話に限られていました。なので、市外通話に対しては交換業務が必要だったのです。
 
 ちなみに、初の市内電話専用で自動交換機が導入されたのは昭和2(1927)年のことでした。その後、順次普及して、東京都から全国への電話が自動になったのは昭和40(1965)年。東京だけでなく全国から全国へ自動でかけられるようになったのは昭和54(1979)年のことでした。スマホ全盛の時代には想像もつきませんが、つい40年前まで交換士が電話の中継をしていたのです。
それで言えば、50歳以上の人は、電話交換業務そのものをご存じないということになりますが、とはいえ、企業などでは代表電話に交換手がいるという仕組みが長い間使われていましたので、電話交換業務そのものにはある程度の知識はあると思います。

かつての入り口。窓と同様、半円アーチになっている。
もともと人の出入りが必要なビルではないので、玄関は小さい。

 ■電話からインターネットへ
 関東大震災後、生糸需要の拡大とともに、全国、世界から商社が集まり、市外電話の需要が急増したことから交換業務の拡大が求められ、こうして最新の交換機とともに事務所機能を持ったオフィスとして建てられのが、この市外電話交換局でした。逓信省の時代(戦前)です。
 
 そして、戦後になって昭和24年電気通信省をへて昭和27(1952)年電電公社が発足、60(1985)年には民営化されNTTへと変化するなかで、需要も減少、海外電話の交換所として利用されてきました。
 平成10(2000)年ころからインターネットの普及もあって横浜市の施設として活用が図られ、平成15(2003)年にリニューアルし、2階が横浜ユーラシア文化館、3階が企画展示室、4階が横浜都市発展記念館という二つの博物館として再出発しました。

裏側にある会館の入り口。右上に見える段差のある窓は階段室の窓。
この斜めの明り取りの窓が建物のアクセントになっています。
入り口前の広場に、明治初めに敷設された卵型下水管など、
横浜の都市発展・復興にまつわるさまざまな設備が展示されています。

 昭和の初期に建てられた逓信省時代の建物は、各地で残されていますが、どれも基本的に外壁がタイル張りで、色はここのようなチョコレート色や濃緑、ベージュ、白などさまざまです。さらに、四角い窓に黒い窓枠、1,2階の間に白い太いライン・・・などが統一デザインで特徴になっています。
 設計は、逓信省営繕課、無駄な装飾を避け、シンプルな中に、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。上品な意匠ですね。
 いま、各地で、旧逓信省の建物はブライダル施設などに変身して話題になっています。そうしたことが可能になる意匠だということでもあります。

建物の裏の、ちょっと離れた道路わきに消防救急発祥の地の碑と、居留地消防隊の地下貯水槽の遺構があり、ガラスがはめられていて上から覗けるようになっています。ご確認ください。

●所在地:横浜市中区日本大通12



 

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