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過酷すぎる巡業

夏場所の休場ラッシュ。三役以上の9人のうち5人が休場という事態。不調力士は他にも多く平幕もとびぬけた力士はいない。優勝争いはもはや混沌で1敗の大の里が平戸海に完敗。やはり受けに回ると弱さが出る。

これで2敗が 琴櫻、大の里、宝富士、御嶽海、湘南乃海の5人。後の3人が今も残るとは。3敗には 欧勝馬、美ノ海、竜電、琴勝峰、明生、宇良、大栄翔 と計12人が名を連ねる。

琴櫻大の里が中心は明白だが2敗でとまるかは微妙。大の里も脆さがあり琴櫻に運が向いてきてるか。

ともかくケガを抱えているのは誰しも同じで、溜まっていた疲労が弾けたということか。

この要因の一つとして巡業日程の過密さがいわれている。通常本場所と本場所は1か月半ほどの間隔があり、今年の春~夏も48日。その間30日ほど巡業・花相撲が組まれている。しかしそれ以上に巡業でどれほど稽古できているかも問題である。

過度なガチンコ主義の為か巡業ですら真剣勝負を謳い、その結果ヘトヘトとなる力士が出ていると愚考してしまう。

4月の巡業日程を見ると

伊勢神宮奉納 3月31日(日) 三重県 伊勢神宮
箕面市 4月1日(月) 大阪府 箕面市立第一総合運動場
新温泉町 4月2日(火) 兵庫県浜坂中学校体育館
一宮市 4月3日(水) 愛知県 一宮総合体育館 いちい信金アリーナ
犬山市 4月4日(木) 愛知県 エナジーサポートアリーナ(犬山市体育館)
福井市 4月5日(金) 福井県 福井県営体育館 メインアリーナ
(七尾市 4月6日 石川県 七尾市総合体育館)勧進相撲として
富山市 4月7日(日) 富山県 富山市総合体育館
御殿場市 4月11日(木) 静岡県 御殿場市体育館
川越市 4月12日(金) 埼玉県 川越運動公園総合体育館
藤沢市 4月13日(土) 神奈川県 秋葉台文化体育館
さいたま市 4月14日(日) 埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
靖國神社奉納 4月15日(月) 東京都 靖國神社相撲場
浦安市 4月18日(木) 千葉県 バルドラール浦安アリーナ
川崎市 4月19日(金) 神奈川県 川崎市とどろきアリーナ
横浜市 4月20日(土) 神奈川県 横浜アリーナ
前橋市 4月21日(日) 群馬県 ALSOKぐんま武道館
木更津市 4月25日(木) 千葉県 木更津市民体育館
水戸市 4月26日(金) 茨城県 アダストリアみとアリーナ
所沢市 4月27日(土) 埼玉県 所沢市民体育館
深谷市 4月28日(日) 埼玉県 深谷ビッグタートル

コピーして編集するだけでも大変。大阪から中部・北陸・関東甲信越と隈なく回っている。見てわかるのは都市部が殆どということ。かつて数班に分かれた時代は、直接観戦に行くのが難しい山間部の巡業も多く、学校の体育館や露天の興行もあった。イメージとしての巡業は同じだがいつからかこうなった。 勧進元も都市部が多いのだろうが。新温泉町の興行ぐらいである。

都市部の方が箱も大きく当然実入りもいいはずだが、特に首都圏の巡業は地方への普及という点から見てもどれほどためになっているか。結果利益だけ?

日程面でも伊勢神宮奉納相撲から富山市の興行まで8日続き、中休み3日で御殿場から靖国神社の興行まで5日連続。2日休みのち埼玉や横浜など首都圏場所。29日間の行程で開催なしは8日。近畿・北陸・関東と回るだけ当然だろう。

移動も大変なようだ。ほとんどがバス。特別仕様というわけでもなく大きな力士が窮屈に座ることとなる。腰痛、膝痛など慢性的な痛みを抱える力士にはつらいようだ。途中離脱が多いのも関係ありか?

食生活の面にも色々とあり、2014年の記事だが「弁当の改善が課題」として

「弁当の改善だよね。昼も夜もでは内容も似通ってしまう。力士の健康管理も大事だから検討したい」。10月10日から全国13カ所で開催する秋巡業をにらみ「食の改革」を提案した。

 現在、巡業中の力士の昼と夜の食事は弁当が基本。夜は宿泊地周辺で外食の場合もあるが、千代丸は「北海道では3日間カップラーメン」。来月で40歳の前頭5枚目旭天鵬(39=友綱)も「どうしても揚げ物が多くなるから、結構つらいよね」と、悩みは深い。

かつては地方で有望な少年を探し角界に入門のパターンもあった。のちの関脇若秩父が少年時代に麦飯生活の中、秩父の山巡業で「銀シャリと豚の味噌炊き」に感動して入門したという話がある。大鵬も同じようなエピソードを持つ。

食べるのも稽古と言われる程重要にもかかわらずなおざりになっている。

一時ちゃんこが復活したが、2018年にも力士会会長の鶴竜が巡業食事の改善要求とする記事があるなど、基本は弁当のようだ。日程から見るとそうなるだろう。

一番重要なのは基礎となるべき稽古がどれほどできているかということ。

読売大相撲誌で過去、巡業ルポとして、各力士の稽古番数の調査があったが1人平均数番という結果だった。本土俵のみが全てではないが巡業で稽古というのはもう昔のことのようだ。巡業の全休力士もかなりいるが、正直休養目的の場合もあるはず。本場所も腰痛で一進一退の高安も巡業はよく休場している。

こうなると「力士」にとってどれだけ恩恵があるか考えてしまう。上位の大量休場という事態になっただけにである。

巡業で一歩成長し本場所でその成果を発揮するのはもう昔語りではないか。

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