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【小説】トンとドン【前編】

わたしたちは、キラメキの2階へ上がった。

ラーメン屋の1階は人で満席だった

「はーい。こっちが塩のキラメキ」
「こっちが味玉つき醤油のキラメキ」

ひやを用意する前にラーメンが運ばれてきた。

こっちは、上着を脱いでいた最中だったのに。

さすが、京都民自慢の「ラーメン キラメキ」。待機列で先に食券を購入できる店はそのへんの気前がきく。

天一てんいちは なんだかふるくさい。コロナ以降、衛生が気になっちゃって。めっきり行かなくなった。あんなに好きだったのに。

トン「…….(ズッッゥーーーー)」

トンちゃんは興奮気味だ。

ニンテン・トンちゃん。

彼女は、メガネを曇らせながら塩のキラメキをすする。鶏白湯な黄金スープをレンゲですくう姿。キラキラ笑顔がまぶしい

トン「でさ?ウチ、会社むいてへんわ」

笑顔のまま言ったので、ちょっとわかんなかった。

トン「女性の目線で感想をくださいっていわれるやん?あるあるやん?けど。ウチ理系なわけよ。ヲタクな男子にかこまれてウチら育ったわけで。やっぱそこらへん、ぜんぜんわからへん。」

トンちゃんは、アイデンテイティがぐらついていた。

トン「京アニにいっとけばよかった。」

おい。と思った。
トンちゃんは無敵だった。

トン「モニター感想会議とか興味あったから。先輩の開発した製品さわってみたいやん?けど、やっぱりようわからんかった。『きらきら~がほしいです。』とか『しゃんしゃん~がほしい』しか言われへんかった。人間工学で論文書いたウチがこんなことしかいわれへん。これは、もうアカンわ。開発者として失格。なんでウチ採用面接受かったんやろ。先輩はウチのことめっちゃ褒めてくれるんやけど。周りがすごすぎて。ついていかれへん。」

まだまだウチら1年目でしょ?そんなもんだよ。

トンちゃんは、自分の仕事のできなさを延々と猛省していた。ラーメンと戦い終わっても。しばらく顔面びちゃびちゃだった。汗か涙か鼻水か分からない。テッシュで赤い目を押さえる

ほら、そろそろいこ。

トンちゃん今日こそ年パス持ってきた?

トン「あるで」

そのままキラメキを出る

トン「ヲタ恋のつづき読みたい あと、ミスなか」


この日の晩LINEがきた

トン「同期とやっぱ話あわないから、たすかる。今日はうれしいかった。ありがとうね~」



【関連】次回はこちらです。

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