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郷愁

 たまに、いいなって思うこと。それは、娘さんに面倒見てもらっているおじいさん。頼んだ定食も食べきれず、娘さんとお店の人の前で黙って咀嚼している感じ。悲しそう。年を取るとにじみ出る、諦めというか、そんな表情。ゆっくりと立ち上がり先ゆく娘を追いかける。腰も膝も自由に曲がらないで、今にも転びそう。いつか自分も、と思うと同時に、親も、祖父母もと思う。自分はまだまだだ。そんなことを思いながら、向かいの席に座って見ていた。目は開いているのかわからない。
 「血の通った話がしたい」。岡崎体育の「式」。彼には物悲しい歌が、妙に似合う。ふざけた曲と真面目な曲があって、ネットで体育はこのためにふざけた曲を歌って注目を集めているといっていたが、僕は違うと思う。この総体が岡崎体育である。「なにをやってもあかんわ」で諦め、「鴨川等間隔」で倦怠感。ポップとの相性が悪くて、でも、それがいい。

 夏、食欲が失せてしまって、ろくに料理を食べていない。外食も増えて、出費がかさむ。何をやるにもテキトウ。ある人を自分より下と決めつけて安心する夜。まったく健全じゃない。血の通った話がしたい。無知を恐れて口が閉じる。食も会話も進まない。血の通った話がしたい。話がしたい。

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