POMの3Dプリント

FDM(FFF)3DプリンタでPOM(ポリオキシメチレン、ポリアセタール、デルリン)の造形に挑戦した。

高い結晶性のため高強度、耐水、耐薬品、低摩擦耐摩耗などの利点で知られるPOM樹脂。
3Dプリントすることでギヤやスライダー部品などの自己調達が可能となる。
一方で日本国内では武藤工業ぐらいしか扱いのない、造形難度の高い材料でもある。

使用機種
QIDI X MAX3
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BZ7ZZZH4/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o06_s00?ie=UTF8&psc=1
材料
武藤工業 3DプリンターフィラメントPOMポリアセタール1.75mm
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B085G4J7TX/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o02_s00?ie=UTF8&psc=1

条件
ノズル温度 初期層270℃ 以降260℃
0.4mm 硬化鋼 普段CFナイロンなども使い真鍮に変えるのが面倒だったため

ベッド温度 120℃
チャンバー温度 65℃
ともにX MAX3の最大温度

使用スライサー OrcaSlicer
QIDIプリセットのPCポリカをベースに条件出しを行った。
定着の悪さばかり情報が見つかるので、ブリムを外周10mmとした。
先行して造形した棒の収縮測定結果から造形後の収縮は97%

造形モデル
POMといえば摺動部品ということでギヤを造形する。
https://www.printables.com/model/550127-gear-fidget

最初のトライでは武藤工業POMフィラメント付属のBuildTakを使用した。
このフィラメントを購入すると200x200mmのBuildTakシートが1枚付属する。
以前Ender3でZoffsetを失敗したスムースPEIスプリングプレートがあったので、それに貼り付けた。

先行して収縮の検査を行うために150mmの棒をプリントする、がBulidTakでは定着が悪くすぐ剥がれる。
プレートから剥がれてしまったがノギスで寸法をチェックするとだいたい97%ぐらいとなった。

改めてギヤを造形するがやはりBulidTakでは、20mm高さも耐えることができなかった。
その後、ケープ、シワなしピットをBuildTakに適用したがあまり変化は無い。
数回のトライでBuildTakの表面が割れ始めた。
あまり良いモノではない印象。

テストしたビルド面は上記の他に、パウダーテクスチャPEI、アリエク割れガラス柄のPEO。
どれも1層目の定着もしなかったが、情報を検索したところ、紙テープPOM板で成功例を見つけた。

使用するフィラメントと同一材料のビルド面を使用するのはPPで経験していたが、紙への造形は経験がなかった。
ガラスやPEIの普及する前はマスキングテープを使用していたのは知っていたが、今回これを試す。

ちょうどよい幅のマスキングテープを持っていなかったので、事務所で使用するA4印刷用紙をA6サイズに切り出し前述のスプリングプレートに貼り付けた。
最初の紙トライでは安価な文具用両面テープを使用したが剥がれて失敗。
やはり安価な文具用両面テープは高温に耐えることができない。
満を持して、シワなしピットで用紙をプレートに貼り付けた。

造形前の様子

トライ結果、非常に定着力が良い。
最初はZoffsetが遠く、紙から剥がれてしまったが、造形は完走した。

底面部が紙から剥がれる


二度目のトライでZoffsetを調整することで成功した。

ブリムを使用して造形の様子

造形のたびに紙がモデル底面に付着し破れるが、印刷用紙1枚程度なら何ともない。
シワなしピットは水溶性のため使用後は水道で洗うことができる。
強力な粘着を持った耐熱マスキングテープがあれば用紙の糊付けが不要になるかも知れない。

97%の材料収縮補正でXYはほぼモデルの寸法30.1mmとなるが、2つのギヤをSV06でPLA+で造形した軸に通すと動作がキツかったので98%ぐらいが正しい値と思われる。
Z方向に関してはモデル18.3mm→冷却後17.6mmなので詳しい調査が必要か。

問題点
印刷用紙を用いることで造形は成功するが、造形面のソリは多少発生する。
今回造形したギヤの外周が1mmほどソリ変形していた。

左:剥がれたほう 右:Zoffset調整したほう

武藤工業のPOMフィラメントが非常に高価。
amazonやモノタロウで約¥40000/kg
キロ単価で言ったらPPSのほうが安い。
POM自体が比重1.4でPLAより重く、あまり無駄遣いはできない。

今回のギヤはサポート材不要形状であったが、複雑形状を造形するため今後サポートの条件だしも行いたい。

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