【合格体験記】早大 地域探求・貢献入試 (旧・新思考入試)攻略ガイド 第0回:地域探求・貢献入試とは?
早稲田大学が実施している、地域探求・貢献入試(旧・新思考入試(地域連携型))。当シリーズではこの地域探求・貢献入試について、合格体験談を織り交ぜつつ、数回に分けて解説していく。
筆者は2023年度のこの入試を利用して合格した。経験者としての知見を、今後の受験生に役立てられれば幸いだ。
初回となる本記事では、制度の概要と、志願者視点での大まかなポイントや注意点を解説していこう。
※本記事では、名前の似ている新思考入試(北九州地域連携型推薦入試)[基幹理工学部学系Ⅱで実施されている]については扱わない。そちらについては公式のNEWSページなどが参考になるだろう。紛らわしい。
地域探求・貢献入試の概要
この入試を一言で表すなら、「『レポート・小論文・共通テスト』のトライアスロン」である。ただしトライアスロンと違って、一種目目の遅れを取り返す機会は永遠に訪れない。2023年度入試では、法学部・文化構想学部・文学部・商学部・人間科学部・スポーツ科学部の6学部で実施された。
2024年度入試から名称が変更されるが、ひとまず本シリーズでは従来の形式について述べていく。
その内容は、大きく三つの関門に分かれる。
① 課題レポート
② 小論文
③ 大学入学共通テスト(以下共テ)
だ。
制度そのものの詳細は公式サイトに明言されているため、ここでは割愛する。詳細は大学公式ウェブサイトをご覧いただきたい。入試要項(※執筆時点では2023年度のものが掲載)も参考になるだろう。
この入試は、入試要項や設立経緯を一見すると地方出身者有利にも思える。実際、一部の受験解説記事ではそうした記述も散見される。
しかしながら、出身地による有利不利は存在しない、というのが筆者の見解だ。
事実、筆者は首都圏出身だが合格しているし、同じ入試方式で入学した先輩や同期にも首都圏出身者は複数名存在する。
以下では、そんな地域探求・貢献入試のポイントを、大きくメリット・デメリットに分けて解説していく。
なお、各項を踏まえた上でのより詳しい受験対策については、次回以降のテーマとして取り扱う予定だ。
この入試のメリット
① 課外活動の経験を入試に生かせる
何と言っても、高校時代の課外活動経験を入試に生かすことができる点だろう。筆者自身、高校時代は観光ボランティアや変わった職種のアルバイトなど、様々な経験を積んできたため、その経験を生かすことができる本方式での受験を決めた。
今までの経験を生かしたいという方・ちょっと変わった活動をしたという自負のある方は、ぜひ受験を検討してみてほしい。
② 一般入試よりは易しい
ペーパーテストだけに関して言えば、一般入試と比べると条件が緩いと言える。特に、特定の教科で伸び悩みを感じている受験者にはメリットとなるだろう。
本方式での合格には、いわゆる「共テ8割」が必要とされる。これは早稲田の一般入試における合格最低点よりはいくぶん達成しやすいラインである。
筆者は早稲田の一般入試も受験したが、やはり地域探求・貢献入試の方が学力面でのハードルは低い。純粋な学力だけならば要求されるレベルは一般入試の1~2段階下という感覚であった。
③ 国公立大学の併願先にも
これは少し毛色が異なる話だが、国公立大学を第一志望とする人の併願先としても本方式はおすすめできる。
地域探求・貢献入試は公募推薦ではなく総合型入試であるため、早稲田大学の一般入試や他大学との併願が可能なのだ。二次試験まで突破できれば、あとは共テで8割得点すれば早稲田の合格を手にすることができる。共テ後に早稲田の傾向に合わせた対策をせずに済むのは大幅な負担減となるだろう。
本入試におけるメリットは大きく以上の3点だ。中でも、課外活動に精力的に取り組んできた受験生は能力を発揮するチャンスと言えるだろう。
この入試のデメリット
① 変則的な形式
前述の通り、課題レポート・小論文・共通テストの三つの試験全てに合格しなければならない点は大きな負担となる。それぞれの試験で要求される能力が異なるからだ。
特に、課題レポートと小論文については、一般入試と比べて参考書の数が圧倒的に少ない。小論文はまだしも、課題レポートに至ってはあまりにも変則的な試験であり、情報そのものがほとんど見つからないのだ。(そんな思いもあって本連載を開始した。)
こればかりは、対策に協力してくれる人を見つけられるかどうかが鍵となるだろう。筆者の場合は、通っていた高校の学園長先生が小論文指導に長けており、時間を割いていただけたことが大きかった。また、学園長先生以外にレポート内のちょっとした言い回しや表現方法について気軽に相談できる師がいたのも幸運であった。
試験対策のしにくさに加え、三つの試験を並行して対策することも負担となる。
各試験同士の間隔が非常に短いため、合格後に次の試験の対策を始めていては間に合わないのだ。共テ対策に至っては、一般受験生とほぼ同じペースでの学習が要求される。これと並行して課題レポートや小論文を書くことになるので、負担は倍増である。人にもよるだろうが、途中から「あれ、もしかして一般入試に専念する方が楽……?」と感じ始める。正気に戻ってはいけない。
② 合格発表が遅い
この入試の結果が最終的にわかるのは2月の前半頃であり、受験シーズン真っただ中だ。不合格となった場合、すぐに一般入試に切り替える必要がある。
つまり、合否がわかる2月の上旬までは一般入試対策を続ける羽目になるのだ。受験勉強期間としては、一般入試とほとんど変わらない。
このことを当時一緒に総合型対策をしていた友人に愚痴ったところ、「何それほんとかわいそう😰」とのお言葉をいただいた。本当に、なんで総合型なのに英語長文とかやってるんだろう……。
③ 一般入試との併用がハード
第一志望校の一般入試による合格を目指している場合、相性は最悪と言っていい。
本来の受験生が取り組む、基礎固め→応用→過去問演習といった学習の流れに、三形式の試験対策が重なってくるのだ。
本来は基礎固めを行なうべき時期に課題レポートを、応用力を磨く時期に小論文を、過去問に取り組む時期に共通テスト対策をそれぞれ要求してくる。一般入試に絞って対策している受験生と差が広がりやすいのだ。
特に、大学ごとの傾向を掴むための過去問演習の時間が確保しにくい点は非常に苦しい。こうした差を埋め、さらに追い抜くためには多大な努力が必要である。
また、②の項でも述べたように、合格発表が遅い。多くの私大一般入試の出願締切後であるため、「合否がわからない以上、一応滑り止めも出願しておくか……」と、多額の受験料を払うことになる可能性もあるのだ。
もちろん自己採点で合否は予測できるが、自己採点結果が芳しくない場合、あるいはマークミスの恐れがある場合、出願することは大いにあり得るだろう。
実際、筆者もマークミスの懸念から、早稲田の一般入試にも出願することとなった。受験料計11万円を支払う際、親が「これを新思考(旧名称)の入学金に振り替えられたらいいのに」とつぶやいていた姿が目に焼き付いている。おっしゃる通りである。
そう、筆者も早稲田を第一志望として、一般入試との両立に臨んだ受験生であった。次回はこれらの実体験に基づく、受験までの道のりを紹介していこう。
お読みくださった全ての方に感謝をこめて、今回はいったんここで筆を置かせていただく。次回も引き続きお読みいただければ幸いだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?