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柴田佳秀「カラスの常識」寺子屋新書

カラスは嫌われ者。正直俺も好きではない。しかし気になる存在であることに変わりはない。いったいカラスって何?その疑問に答えてくれるのが本著だ。少なくとも俺の頭の中で「カラス=有害ではない」というパラダイムが生じたことは大きかった。

ゴミが少なかった昔は童謡を聞いてもわかるが、カラスは人間にとって近しい関係にあった。しかし、経済成長を遂げた後、カラスはゴミを食い荒らし、時々人間も襲う敵になった。

理由は簡単だ。もともとカラスは雑食系の動物であり、極めて目がいい。ゴミは餌ということになるし、住む場所が減っているところに人間が自分の巣の近くに侵入してきたら、当然攻撃するわけだ。でも面白いのは「カラスは人間を恐れているので正面から攻撃できず、後方からしか攻撃できない」のだ。理由もないのに攻撃するのは人間くらいのものだ。

それにスカベンジャー(scavenger:生態学でいう掃除屋)としての役割もある。カラスが動物の死体を食べなければ、町には動物の死体であふれる。道路で車に引かれた動物を片付けているのはカラスなのだ。

それだけではない。漆の種子はカラスが実を食することで発芽率が高まり、繁殖に大いに貢献しているのだ。その他、巣を他の鳥類(フクロウ・ワシ)にも提供している。正直驚きとともに、人間が一方的にカラスを悪者にしていることに「人間のエゴ」をあらためて実感した。「カラスからの視線」をもつことも大事なことなのだ。

<メモ>
・日本のカラスはほとんどハシブトガラス。歩き方は両足をそろえて飛ぶ。見通しの悪い森林に生息することから30種もの音声パターンを持ち、人間の物まねも可能だ。ハシボソガラスは、二足歩行をする、泣き方も独特で頭を下げながら泣く。

・カラスの死骸に触るとカラスが大量によってくることがある。これは仲間を守ろうという意識の表れだという説がある。

・カラスは石鹸をつつく。これは脂分を好むから。その他蛇口をひねって水を出すこともあるそうな・・。

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