見出し画像

尾原史和「逆行」ミシマ社


標題に惹かれて手に取った。R25をデザインし、「スープデザイン」「プランクトン」の社長である尾原氏の話で、結構楽しく読めた。

表題の「逆行」は論理を位置から積み上げていくのではなく、直感で「いい!」から始まって作品につなげていくような工程をさしている。もちろん「会社への定着を拒否する」といった時代への逆行も含意している。

筆者は専門学校を出て田舎の印刷工場に就職し、働いていた何の変哲もない若者だ。しかし、彼には乾いたスポンジのような吸収力があった。上京して就職したデザイン事務所ですべてが開花していく。

人生は出会いがすべてとまでは言えないにしても、彼が描いていた将来像がここでどんどん具体化していく。そこで重要だったのが「一流との出会い」だ。一流の世界では金儲けの話じゃなくて、人生観、哲学、芸術についての話が妥協なく絡み合って、その中から面白い「偶然性」を生み出していく。

筆者は「ストーリーを編んでいく」ということが「デザインする」ことだとだんだん悟っていく。「スープデザイン」「プランクトン」といった会社を立ち上げ、デザインの実績をしっかりと積み上げていく。

「自分にとっての真なるもの」を発見して「発見と発明の快楽」を得ていく人がやがて圧倒的なものを作る。「考えることを考える」プロセスを経たデザインが人を引き付ける。

今のネット社会はややもすれば、考えたり行動することをせず、情報を簡単に拾ってわかったつもりになることを許容してしまう。いろんな人のいろんな視点を取り入れて楽しみながら、この地球上で自分が意識としてどのレベルにいるのか、いつも考えてみることを筆者は提唱している。

同感だ。デザイン的思考は突破する思考に向いている。これから取りいれたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?