見出し画像

ヨゼフ・チャペック「独裁者のブーツ」共和国

チェコの国民的作家、カレル・チャペックの実兄ということを、この本で知った。俺の書棚にカレルの「コラムの闘争」が奥の書棚でほこりをかぶっていたので、思わずデスク上の書棚に移した・・。「申し訳ない・・」

県立図書館でやたらと目立つ真っ赤な装丁と表題に「ビビっ!ときて」手にとってみた。

「イラストは抵抗する 独裁者のブーツ」

チャペックってあの「ロボット」って言葉を作った人?俺はカレルのことだと思っていたが実はヨゼフだった。今回この本といっしょに「チャペックの本棚」という装丁の画集を借りたのだが、絵心、遊び心溢れるものばかりだった。装丁というか、これは完全にアートでありインテリア・・。感じられるのは「温かいこころ」「誠実な性格」「自由と平和」。

「独裁者のブーツ」はイラストとヨゼフのことば、彼の生涯について書かれているのだが、俺がこの本を通して知った中で大きかったのは「リドヴェー・ノヴィニ」(人民新聞)という「戦う新聞」のことであり、ヨゼフがその編集長を、カレルが主筆をしていた事を知ったことだ。

1937年といえば、世界中でファシストが跋扈していた時代だ。日本も大陸に土足で上がり込み、大量虐殺という歴史的な汚点を残している。(このイラスト中に痛烈な批判が日本にも向けられている「なんてこった、こいつ(日本)には教え(仏教)を授けていなかった」というコメントと共に)

ソ連ではスターリンが、スペインではフランコが、そしてドイツにはあのヒトラーが、まさにブーツで数百万の頭蓋骨を踏みにじり、理解しがたいことを崇めさせ、健全な思考を失わせていた。

「無秩序な世界には秩序が必要で、権力に憑依された独裁者の靴が何百万という民衆の靴に催眠術をかけ、壮大な行進を指揮する。一人でも自尊心をもって声をあげればいとも簡単に踏みつぶされる」

日本でもやたら愛国だなんだと、人を愛さない人たちが騒ぎ立てているが、過去の軍国主義のブーツを懐かしがっている哀れな輩というしかない。

まあ、それはそれとして、ヨゼフはナチスの強烈な圧力に屈することなく「リトヴェー・ノヴィニ」は「独裁者のブーツ」を連載し続け、「雲に書く」という断章を綴っていく。ゲシュタポに逮捕され、強制収容所に送られても、反ファシズムの詩を秘密裏に書き続け、反骨精神を血まみれの中で全うして生涯を閉じている。

ヨゼフは1929年娘アレナのために「こいぬとこねこのおかしな話」という童話を書いている。心優しきお父さんの心は、ファシストを前にしてその絵を怒りの剣に変化させ、ファシストの喉元に向け続けた。

こういうアーチストが・・父が少年だった時代、母が生まれてまもない時代にチェコで息をしていたのだ。

この生を知った上で「チャペックの本棚」を見ると、チャペックの息遣いが感じられて平和な気持ちになれる。「独裁者のブーツ」と「チャペックの本棚」この2冊を手元においていると幸せな気持ちになれる・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?