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『ザ・ノンフィクション』から声を掛けられた話 その2

(その1から続く)
 『ザ・ノンフィクション』の取材で聞かれたのは、「なぜ坂田さんのファンになったのか」とかそんな感じだったと記憶している。時間にして数分くらいかな? その時にディレクターさんに言われたのが、「あなたは会場のほかのお客さんとはちょっと違うと思ったんです」。

 ちょっと違う……? 1人参加だった私は、会話する相手もいなかったのでただ孤独に坂田さんの歌声に感動し、ボロボロと涙していただけだった。もしかしてそれが独特の世界観を持っているように見えたのだろうか。それとも、ディレクターさんは私の心の闇を察したのだろうか? 

 確かに当時の私には心の拠り所がなかった。友達はいたけれど、仕事もお金もそこそこあったけれど、心から信用していた友人に(おそらくお酒が原因で)絶縁宣言をされたタイミングで心にぽっかりと穴が開いていたのだ。

 やけになってお酒の量もどんどん増えて、記憶を飛ばして気絶するように寝る。翌朝に大量のお酒の空き缶を見つけて自己嫌悪に陥る日々。そんな時に支えてくれたのが、坂田さんの歌声だったのだ。ちなみにディレクターさんには、自分もアル中で、とだけ回答したように思う。

 時は過ぎ、OAの2023年8月。つまりディレクターさんはとっても長い期間坂田さんに密着取材していたことになる。ここで私はますます「ザ・ノンフィクション」が好きになる。前編・後編とあったから、合計120分弱の番組に1年くらい、いや、もっと? 時間をかけて取材をしているということだ。なんと誠実で真面目な番組ではないか。

 テレビがないので後日Tverでチェックしたところ、幸か不幸か私の取材部分はカットされていたようだ。いや、カットされて良かった。なぜなら私は取材時に自分の職業をライターと明かしていたからだ。もしもカットされず、アル中について語ったことが編集さんにバレたら、今後の仕事が危うい。アル中、依存症には偏見があるのも事実。アル中には仕事を依頼したくないよね……。

 しかしあの場で、『ザ・ノンフィクション』のディレクターさんから取材を申し込まれたのは、自分の中で良い記念にはなったのは事実。お蔵入りでもね。たくさんの人を見てきたディレクターさんから「この人を取材したい!」と思われただけで嬉しい。というのも、このディレクターさんが坂田さんを発掘(?)したのが、現在の大ブームの発端らしいからだ(確かな情報ではないけど)。そんな方に声をかけられたなんて、それだけで胸熱ではないか。

  現在も坂田さんは、闘病しながら? 精力的に活動なさっている。Twitterなどをチェックするに、もうお酒を解禁しているように思える。そんな私も節酒は続けているものの、時と場合によっては節酒以前よりも大解禁する、を繰り返している。

 この飲酒大解禁の度に、私の人間関係はますます悪化した。人間関係が悪化するからお酒を飲みすぎるのか、お酒を飲みすぎるから人間関係が悪化するのか。もはや自分では分からない(苦笑)。

(その3へ続く)

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