みどり

ずっと側にいてくれた人をお見送りしました。想い出を綴ります。

みどり

ずっと側にいてくれた人をお見送りしました。想い出を綴ります。

最近の記事

あなたと話したい 3

あなたとはよく逢いました。 約束していなくても、ふっと街で偶然に逢いました。 「よく逢いますねえ」 そう言い合って笑ったものです。  一番鮮やかなシーンは京都の百貨店のエスカレーター。 滝のように連なるエスカレーターの上下で顔を見合わせたのでした。 「あれー?」 「よく逢うねー」 何か引き合うものを感じて、 最期のときも、あなたはわたしに知らせてくれる気がしていたのです。 『時雨の記』のように、 会いに来てくれる気がしていた。 だから、あなたの死を知ったとき、 「知

    • あなたと話したい 2

      久し振りに水辺を訪れた。 日差しを受けて、魚が泳ぐ。 あなたは川や池を通ると必ず魚の影を探してた。 そして、じいーっと見入っていましたね。   そんな時は大抵いいお天気で、わたしは日焼けが気になって、 「早く行こうよ」と言葉にはしないものの、 あなたほど、水面に夢中になれなかった。 でも、今日は吸い込まれるように見入っちゃった。 4,5匹の魚の群れのゆらめくその動きが面白くて、立ち止まる。 そうか。 これを見ていたんだね。惹きつけられるね、命の動きそのものみたい。 目

      • あなたと話したい 1

        声を聞くときもある。 なんども云われた言葉がふと耳に浮かぶのだ。 「沈着冷静、八分の力」 わたしがすぐにフルスロットルになるのを見て、折々囁かれた。 あなたは正しい。この言葉の正しさが証明されるのはいつも、わたしが全力で駆け抜けて倒れてしまった後だった。ある時点を超えるとブレーキが利かなくなる。自分のこの性質を「集中力だ!」と強がってみるけれど、空しい。    「そら、みたことか」みたいな非難がましいことは云われなかったな。 どんな人にも同じように接していたのかな。今にな

      あなたと話したい 3