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あなたと話したい 3
あなたとはよく逢いました。
約束していなくても、ふっと街で偶然に逢いました。
「よく逢いますねえ」
そう言い合って笑ったものです。
一番鮮やかなシーンは京都の百貨店のエスカレーター。
滝のように連なるエスカレーターの上下で顔を見合わせたのでした。
「あれー?」
「よく逢うねー」
何か引き合うものを感じて、
最期のときも、あなたはわたしに知らせてくれる気がしていたのです。
『時雨の記』のように、
会いに来てくれる気がしていた。
だから、あなたの死を知ったとき、
「知らないうちに!」と
慌ててしまった。今でも慌てているかもしれない。
最後に顔を合わせた時の別れ際のあなたをしっかり覚えていません。
あの時、わたしは自分のもの想いに捉われて、
あなたの背中をちゃんと見送ることをしなかった。
それまでは万が一のことを考えて、瞳の奥に焼き付けるように
いつも目に留めていたのに。
象徴的です。
自分のことばかり考えていたわたしの姿が刻印されたようです。
ごめんなさい。
失ってから気付くことばかり。
この気持ちと一緒に歩くしかないのね。
また何処かでふいに逢える日まで。
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