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まあ太のぼうけん その5
まあ太とカラス天狗と犬とゴリラは、ずんずん南東の方角へ歩いて行きました。
するとカラス天狗が「里があるぞー。」とめずらしく仕事をしました。ずいぶん高いところを飛んでいるのに声が聞こえるということは、かなりの大声です。
まあ太は里には自分の嫁さんになってくれる人がいるだろうかとだんだん心配になってきました。里へ行く途中にだんご屋さんが見えて来ます。
道祖神に新しい花が飾ってあり道もきれいになっているので、人がよく通るところなのでしょう。
団子屋さんの前に来ました。まあ太くらいの娘さんとおばあさんできりもりしているようです。娘さんが4人にお茶を出しました。「みたらし4つと三色団子4つね。」
カラス天狗が注文をしました。実際こういう時にはよく出てくるやつです。
娘さんがだんごを持って来ました。4人はどれが1番大きいかで激しくもめています。
猿がお金を払って、おばあさんと話しが盛り上がっている犬を引っ張ってまあ太は再び歩き出しました。
里の入り口には「勇者の村」と書いたカンバンが立っていました。
名だたる勇者なら嫁さんの探し方を知っているに違いないと、まあ太は最初に出会った人に「あのう嫁さんを探しに遠くから来ました。」
と尋ねました。
すると「勇者は嫁など探さない。向こうからやってくるものだ。俺は鬼を300匹倒したことがある。」という答えが返って来ました。
人に話しかけるのが少々嫌になってきましたが、気を取り直して木陰に寝そべっている人たちに声をかけました。
「あのう嫁さんはどうやったら見つかるでしょうか。」すると自称勇者たちはまあ太に見向きもせず「俺は100貫の金棒が持てる。」とか「俺は竜宮城へ行って来たばかりだ。」などとひとりごとのようにずっと話し込んでいます。
これはいかんとまあ太は思い、辺りを見回すと誰1人掃除をしたり牛を引いたり畑仕事をしていません。畑は荒れ放題の伸び放題です。
また、女の人にも会いましたが「私はディオールのバックを700個持っている。」とか「私の息子は20人全員オックスフォード大学に合格した。」などとああ。そうですか。と言うしかないような返事が返って来ます。
昔々この村には本当の勇者がいて、荒地を耕し鬼をこらしめ金銀財宝を村に持って帰りました。でもそのために村の人々は働かなくなり自分がさも1番だと自慢ばかりするようになってしまったと言うことです。
「どうしてみんなあんなにすごいのに何もしようとしないのだ。」
まあ太の困ったような顔を見て犬は「行きましょうか。」とだけつぶやきました。
4人でぼちぼちと歩いていくと今度は「賢者の街」とアーティスティックに書かれた標識を見つけました。
ちらりと嫌な予感があたまをかすめましたが、賢い人なら嫁さんを見つける方法をいくらでも知っているに違いない。と街の中に入っていくと、その思いはからくも崩れ去りました。
さっきすれ違ったふたりはあたまにネクタイを巻いているものの服を着ていません。こちらの人はフーセンをかぶって顔を隠しており5本指靴下だけを履いてカラフルな犬の散歩を楽しんでいます。
オープンカフェでお茶をしているピカピカのポリ袋を着た男は頭が鳥の巣みたいで、実際彼のあたまにはヒナが3匹住んでいました。
まあ太にはその格好の意味がさっぱりわからず、なるべくまともそうな人に話をしましたが「今日は雨が降っている。つまり人はそういうことだ。」
などと言っていることもよくわかりません。
まあ太は軽い引き付けを起こし3匹の獣たちに引っ張られながら静かにこの場を去りました。
昔この街にも賢い人たちが大勢いて独自のファッションセンスとアイデアを実現していく事でこの街は賢者の街と呼ばれるようになりました。しかしそれをよく思っていない者たちが、自分こそは賢いとおかしなことばかり思いつき、またいかに人と違った格好をするかといったことばかり考えて結局何が何だかよくわからない街になってしまったということです。
「なぜ賢い人があんなみっともない格好をしているのだ。」
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