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とある喪女の思い出

(これは2018年当時大学3年生の筆者が書いた、ただの日記です。)

 突如思い立った箱根一人旅。キオスクで安いおにぎりを買って小田原線のホームに並んだ。会社員や旅行者など大勢が乗り込む始発電車に乗り、急いで席を確保する。安心して荷物を膝に乗せながら、左に男性が座るのが視界に入った。彼は連れの女性に向かいの空席に座るよう合図した。私はまた、こんな些細なことで消えてしまいたくなる。向かいに座った女性は脚がとても細くて、THE NORTH FACEの真っ黒なリュックやストリートファッションがよく似合っていた。このカップルは恐らく、私とほぼ同い年だろう。一方私は600mlの麦茶が両ポケットに刺さった地味なリュックを膝に乗せている。そんな惨めな人生を歩んで、もう21年が経とうとしている。

 小学生の頃は漫画やアニメにも興味がなく、クラスではイベントを考えてクラスを盛り上げる一人だった。休み時間は別の友達に両手を引っ張られるくらい人気者だった。授業中も隣の男子と笑い合って注意されるような女の子だった。それが中学の頃一変した。別の小学校の生徒と共に編成されたクラスの雰囲気の違いになかなか慣れなかったこともあるが、何より皆が女になっていくのを見て嫌悪感を覚えた。女友達を減らさないために男を避け続け、オタク趣味を持つようになりそれに拍車がかかった。いつしか、うまく男性と話すことかできなくなっていた。そして、今の私が出来上がった。

 それでも中学の頃、私には好きな人がいた。初めての出会いはもうよく覚えていない。たまたま同じ塾に通っていたことから意識するようになり、気付けばいつも彼を目で追っていた。背が高くやや外国人的な顔付きで、何となく色気があった。スポーツ万能で成績も優秀、特に英語は彼に解けない問題は無かったと思う。字まで上手くて、何をやっても中の上出来るタイプ。私とは正反対だった。しかし学年で目立つような人ではなく、特別人気者という感じでもなかった。クラス内カースト上位の人達と仲が良いものの、いつも何人かで行動する時は一番後ろを歩くような人だった。

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