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詩「酸欠」


囲まれた壁と
口を覆い被す布で
私の脳内に
酸素が全然行き渡らない

体温と焦りが
徐々に上昇を始める
同時に
手汗も止まらない

(誰かの苛立ちが、まるでジェットコースターの様に、ノーブレーキの暴走を始める。)

行き先に着くまで
私の為の扉は開かない
私は、最後まで理不尽に付き合うしかない

巻き込まれる
飲み込まれる
私の意思もお構いなしに
立ったままでは
遠心力に逆らえない
咄嗟に座る席を確保する
私は
虚ろな目で
自分が出した空気を
再び吸い込む

長い長い登り坂が
最悪なコースへと変貌する
手摺てすりに掴まる人々の溜め息が不安を増殖させる
窓硝子が過度の二酸化炭素で曇る
子供達は、そこに文字を書きたがる

(それでも、速度は遅くはならない。)

真の恐怖とは
パニックになる手前ギリギリに存在している
危機感である
この足が地を踏むまでは…
狭い範囲の生暖かい呼吸を吸い続ける

長い長い静寂を抜けて
終点に辿り着き
布を外して
私は深い呼吸をした
水面に顔を出して息を吸うダイバーの様に

此処に着くまで
私は
生きた心地がしなかった
ただ
酸欠で脳がクラクラしていた
ー圧倒的な思考力低下で現在地点に到着ー

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