見出し画像

ショートショート「ヒーロー男子」

僕は、小さい頃、TVの中のヒーローに憧れていた。
その為、曲がった事が大嫌いで、真っ直ぐ育ち過ぎたせいか、周り(特に女子)から、″ヒーロー男子″と呼ばれ、崇められ、奉られる様になってしまった。
そんな僕は、ある事を思い付いた。
移動教室の机の上に、ある質問を書いたのだ。
「この机を使っている人は、誰ですか?」
ベタな質問だ。
よくあるアイデアだ。
だけど、真っ直ぐに育ちすぎた僕には、刺激的な出来事が全くなかったのだ。
(これ位、してみても良いだろう)
よくよく考えたら、机にラクガキすること自体、初めてだった。
本当に、真っ直ぐ育ちすぎたものだと自分でも思った。

さて、また、移動教室の日になった。
自分で書いた、あの質問は、どうなったのだろうか?
恐る恐る、机に目をやると、丁寧な文字で、こう書かれていた。
「佐伯優です。」
…佐伯優という名前に覚えはなかったし、男子か女子(多分、女子だと思う。)か、名前が微妙だった。
でも、自分が起こしたアクションに返事が来たという事が想像以上に楽しくて、調子に乗った僕は、机の上に、こう書いた。
「Who are you?」

移動教室の日。
机の上には、こう書かれていた。
「You Saeki」
ちゃんと、英語で書かれていた。
何だか、嬉しかった。
案の定、また佐伯優(勝手にちゃん、女希望)だ。
僕は、こう書いた。
「ここに座っている人は、佐伯優でいいのかな?」

移動教室の日。
「佐伯優で、いいとも!」
ブッ!
僕は、思わず、吹き出した。
【何だか、この小説、年代を感じるが、笑笑】
「佐伯優」は、自分が思っていたよりも、面白い人物だったらしい。
僕は、更に、こう書いた。
「あなたは、佐伯優でいいのですか?」

移動教室の日。
「佐伯優で。ファイナルアンサー!」
ぶほっ。
【知らない方は、検索してみて下さい、汗】
どうやら、佐伯優は、かなりのTV大好きっ娘(勝手に娘。女希望は、譲れない)らしい。
何だか勝手に、色々想像してしまった。
佐伯優は、字が綺麗で、案外面白くて、こんなバカげた質問に答えてくれる、真面目な子だと思った。
それから、ほぼ毎週、こんなやり取りが続いたが
、僕は、決して佐伯優を探さなかった。
本当に男だったら、イヤだと思ったのと、このおかしな関係のままでいいやと、ちょっと思ってしまったのである。
きっと、佐伯優も、僕と同じ気持ちだったに違いない。
だから、名前以上の情報を一切明かさないのだと思った。

今週の移動教室。
「あなたは、佐伯優ですか?(好きなアニメキャラクター調で)」
「佐伯優だっちゃ!」
うーむ…。
やっぱり、女の子かもしれない(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?