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ショートショート「普通女子」

私は、とりたてて、何の特技もない、華もない、いわゆる普通女子である。
数学が得意というわけでもないし、国語が得意というわけでもない。
絵が上手いというわけでもなく、字が上手いというわけでもない。
ましてや、スポーツは、大の苦手である。
鈍臭いし、トロい方である。

好きな物は、数えると、10個以内におさまってしまう。
プリン、ヨーグルト、アイスクリーム、お花、バラエティ番組、恋愛ドラマ、読書、ドーナツ、音楽…
今、自分で気付いたけど、食べ物が結構、沢山ある。
食べる事が好きなのかもしれない…(汗)

今日も、トボトボ、1人で考え事をしながら帰宅していると、溝に落ちてしまった。
足を擦りむいているし、折角の真っ白な靴下が汚れてしまった。
ー最悪だ。
ふと、人の気配を感じ、振り返ると同級生の不良グループの男子がいた。
見られたんだ。
全部…。
ー最低だ。
すると、その不良男子が手を差し伸べてきた。
「掴まれ」ということらしい。
私は、思い切って、彼の手に掴まると、引き上げてくれた。
不良に助けられるなんて、驚きだ。
「ありがとう…。」
と言うと、不良は、下を向きながら、こう言った。
「あんた、案外、良い奴だから。」と…。
そして、走って行ってしまった。
私は、驚きのあまり、ボーッとしてしまった。
私は、今まで、自分では、全く気付いていなかったけど、″案外、良い奴″なのだということらしい。

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