『レガイア伝説』|プレステの思い出

体育祭で二人三脚のペアになったとき、露骨に嫌な顔をされた。冷たい目をする美人だと思っていた。運動神経が皆無で足を引っ張って、何度も大きな舌打ちをされた。

ギャルではないし派手さもない、黒髪でミニスカートにルーズソックの彼女は、いつも、同じ友だちと二人でいる姿を見つけた。友だちは茶髪で丸顔の、普通の女子高生だった。

「弟がやってて面白かったから、私も今やってる、レガイア伝説」

友だちとの会話を盗み聞きしたのではない。瞬間、教室の音が消えて、彼女の声だけが耳に届いた。

その日の帰りに『レガイア伝説』を買った。うっすらノアが彼女に見えた。

「英語、満点だった」

彼女の声だけが耳に届いた。中間テストの英語はクラスで二位だった。一位は彼女だった。『レガイア伝説』が楽しかった。

ある日の帰り、駐輪場を抜けると、彼女の後ろ姿が見えた。地元が同じだったことを知らなかった。気づかないふりして、自転車で、彼女を横目に追い越した。

彼女は、煙草を咥えていた。

多分、ショックだったのだろう。私には『レガイア伝説』をクリアした記憶がない。ただ正直なだけだと思っていた。私はモテる風貌をしていなかったから嫌がられるのは当たり前だし、鈍くさくて迷惑を掛けたから罵倒されても受け入れる覚悟だった。高校二年の秋の段階で英語で満点を取れるのはなかなかの才能だ。きっとグローバルな視野を持っていて、だから表現も露骨で嘘がなかったんだろう。勉強とゲームしかしていなかった私にとって『レガイア伝説』は嬉しかった。英語でワンツー並んだとき、『レガイア伝説』も並んでいる気になっていた。地元が一緒だったのはもう運命だ。俯きながら煙草を咥える彼女の姿は、遥か遠い世界の美人だった。『レガイア伝説』を一緒にプレイする気持ちはあっても、煙草を嗜む勇気はなかった。

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