『アストロノーカ』|プレステの思い出

高校二年。青春とは縁遠い、勉強とゲームしかしてこなかった私は、やるべきゲームが切れてしまうと、考えることが増えてしまって、妙に不安になってしまって、ソワソワと落ち着かなくなってしまっていた。禁断症状である。

ゲームを。何かゲームを!

そこで手に取ったのが『アストロノーカ』だ。ゲーム内で野菜を育てるという、絶対に普段の私なら買わないゲームだ。

ゲーム内で、食べられもしない野菜を育て始めたら、もう究極だろう。その時間、その手間、リアルに野菜を育てた方が、絶対に有益だろうに。

画面の中の野菜が育つことに一喜一憂して、私はもう狂っているとしか思えなかった。強い野菜ができた。おぉ。もっと強い野菜ができた。おぉ。変態である。いや、これこそが、日本人の潜在的な農耕精神なのかもしれない!

ある日、私はうっかり、教室で『アストロノーカ』をプレイしていることを口にしてしまった。誰もこのタイトルを知らなかった。そりゃそうだろう。こんなゲームをマジでやっている奴は狂っている。どんなゲームなのか。と聞かれてしまった。教室の皆が注目する。いや、奥深いんだよ、日本人の心をくすぐるというか。強い野菜を育てるのも結構大変だし、頭を使うし、日本人だからこそリリースできた細部に拘りのある良ゲーなんだよ。でも私の口から出たのはこうだった。

「野菜を育てるゲーム」

爆笑である。

お前、ゲームで、野菜、育てるとか、マジか。

私は暫く農夫と呼ばれた。

野菜の調子、どう?

畑の準備、大丈夫?

手、荒れてない?

荒れるか!

こちとらデジタルじゃ!

いい加減、私も我に返った。

「うるせえ、もう、やってない」

「じゃあ、貸してくれない?」

お前もやりてーんじゃねえか!

はじめに農夫と私を呼びやがった奴だ、私は腹いせに絶対に貸さなかった。でも分かる。その気持ち。お前も日本人なんだな。野菜を育ててみたい欲求。あるよな。

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