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Hasselblad instax SQ Back[001]

前回の記事で大見得を切った後にいろいろとリサーチをしていたところ、早くも2つの事例を見つけた。

okuthorkit_camera
香港でCustom Instant Camera playerをしているというOkuthorkit氏

Hasselblad Square Instant Film Back
KickstarterでのinstaxSQのフィルムバックプロジェクト(現在キャンセルされている)

Okuthorkit氏はマミヤの67カメラを使ってインスタント写真を撮っている方で、どうやらinstax SQ6をハックしているみたいだ。こちらも素晴らしい出来だ。
また、僕が行おうとしていたものに限りなく近いものが2017年の11月にKickstarterにて発表されているが、こちらはより良いバージョンにアップデートするため、現在プロジェクトを中止している模様。世界中のフィルムカメラLOVERたちが様々なプロジェクトを発表していることに改めて驚いた。

Prototypingの心得01 ― ルールを作る

さてHasselbladのinstax SQUARE Back(略してHasselblad is Back!)製作にあたって前回の記事で挙げたミッションをおさらいする。

1. 製作データ・方法を公開し、誰もが作り、利用できる状態にすること。
2.Hasselbladの6×6判の性能を完全に活かせるようにすること。
3. 焦点部分などカメラの光学性能を十分に発揮できるようにすること。

先の事例で2,3に関して、既に達成している人がいるみたいだが、僕なりにこのオープンソースのプロジェクトは進めていきたいと思う。

これらを実現するために更に4つのルールを追加する。
これは僕のプロジェクトが暗礁に乗り上げたときに、何が本当に大切なのか確認するためのものだ。ものづくりは材料の入手性や価格、成形の可否によって計画が止まってしまったり、大きな方向転換を余儀なくされる場合がある。そんなときに目先の解決だけを追ってしまうと本当にやりたかったことがいつの間にか変わってしまうことがある。そうならないために「ここだけは譲れない」部分を明記しておく必要があるのだ。

01: すべてのHasselblad500シリーズに利用できる。
02: 電源を必要としない。
03: 多重露光できる仕様とする。
04: シンプルでわかりやすく親和性のあるインターフェースにする。 

01 このプロジェクトはもちろんオープンソース・プロジェクトなので、できるだけ多くの人に知ってもらい、作って(使って)もらうことを念頭置く必要がある。そのためにはできる限り多くのHasselbladシリーズに利用できる設計にしたい。幸いHasselbladのフィルムバックの多くは同じものを流用できるので、ベーシックな500シリーズは網羅したいところだ。

02 フィルムカメラの利点の1つは電源を要さない(もしくは限りなく省電力ですむ)ことなので、こちらも、現行のチェキのような電源が必要なタイプではなく、電気を全く使わない仕様にしたい。バッテリーの容量を気にしなくて済むことは重要な要素だ。

03 僕自身トイカメラLOVERなのでこの機能は外せない。多重露光ができることで表現の幅が大きくひろがる。今回はフィルム送りとシャッターチャージを同時に行う必要はないので、この機能に関して技術的なハードルが低いのもポイントだ。

04 写真の主役はもちろん写真だ。カメラじゃない。写真を得るために余計な煩わしさはいらないし、わかりやすく使いやすいことはとても重要だ。ただ、今までずっと使ってきた本体とフィルムバックの組み合わせの操作性から逸脱しないように配慮しなければならない。使用者は新規顧客ではなくHasselbladユーザーなのだから。

Prototypingの心得02 ― 既存品を理解する

デザイン/製作に取り掛かる際にはなるべく先入観を捨てておくべきだ。自分の頭の中にある設計図が必ずしも完璧とは限らない。まずは既に安定して運用可能となっている既成品の構造をリサーチし、イメージを具体化することが必要だ。

僕は今回 instax SQUAREを利用してフィルムバックの製作を行う予定なので、既存のHasselbladフィルムバックの接続部分の構造理解、instax SQUAREのフィルム寸法の計測、フィルムの感光から押出しまでのプロセスを理解することをまず行うことにした。

1: Hasselbladフィルムバック

Hasselbladの500シリーズは基本的に背面に取り付けるフィルムバックが共有可能となっている。そのため、取り付け形状を流用できる形に設計ができればすべての500シリーズに取付可能ということになる。

しかしここで注意しなければならないのは、Hasselbladの500ELシリーズは本体下部に自動巻き上げモーターが固定されており、この部品の後方がフィルムバックの位置まで伸びているため、新たに設計するフィルムバックは干渉しないよう、下部には延長出来ない構造となる。
また、上方には本体との固定用爪があるため、こちらを塞ぐことは出来ず、正面左側には巻き上げのためのギアが露出しているため、こちらも塞ぐことは出来ない。

最後にフィルムの感光面までの距離だが、こちらは既存のフィルムバックの端面からノギスで計測したところ3.3mmであった。こちらは手で測っているため、誤差があるだろう。

2: instax SQUAREのフィルム

Hasselblad-Instaxプロジェクトでも取り上げられているinstaxのフィルムは86×54mmの縦長であり、露光面は62×46mmとなっているが、instax SQUAREでは86×72mmの露光面は62×62mmで、6×6がぴったり収まるサイズとなっている。

ここで問題が発生した。上で取り上げた感光面までの距離だが、instax SQUAREではなんとカートリッジからの距離が3.5mmであった(あくまで手で測った値だが)。つまり、フィルムカートリッジをHasselblad本体に直接つけたとしても感光面が0.2mmほど遠くなり、ピントが合わない計算になる。フィルムバックを途中交換する等を想定すると本体に直接つけることは現実的でないし、ケースの厚みを1mmにした場合1.2mmも感光面と離れてしまう、この問題はかなり深刻だ。Hasselblad-Instaxプロジェクトで調整が必要という記載があったが、調整自体不可能である可能性もある。ただこれは手で測った数値だし、他のプロジェクトでは解決案として光学的な追加構造を挙げているなど対応策が0ではないので、頭にとどめておきつつも、一度製作してみて実際の様子を見ることにする。

3: フィルムの感光から押出しまでのプロセス
Hasselblad-Instaxプロジェクトではinstax miniを使用していたが、僕のプロジェクトは、instax SQUAREを利用する点と、instax mini8などの電動式の正規品は高価である点、今回はプロセスの理解が前提でパーツの流用はしない点により、タカラトミーのプリントスという商品に注目した。

こちらは電動での押し出しではなく、手動でフィルムをロードする仕組みのようだったので、僕のルールにマッチしている商品で、更にinstax mini 8の半額以下の値段で購入できるため、早速購入し分解した。分解の工程は省略するとして、押出のために必要な機構は以下のようであった。

画像右上の棒状のものは引き出しのためのノブが固定されていた。こちらを回転させることで連動しているギアが回り、大きなギアの背面にある機構によって前後運動に変換され、爪を動かしインスタントフィルムを数mm押し出す。そしてノブに部分にはローラーがつながっており、押し出されたフィルムを掴み、現像液を潰しながら排出する仕組みだ。これを一つのノブの回転のみで行っている。

今回押出と排出を1アクションで実装するかは悩みどころだ。構造が複雑になるし、3Dプリンターでの成形強度に不安がある。とはいえ別々にすると、うまくローラーがフィルムを掴めない可能性もある。ギアだけ既成品を利用するなどの対策も検討しなければならない。今回製作にあたってすべてを3Dプリンターのみでこなすことは不可能だろう。ただし、多くの人が専門的な知識を要さずに組み立てるということは僕のミッションの1つだ。なるべくこのことは優先的に考えたいと思っている。

まとめ

今回ルール決めや調査を行って、製作にあたっての懸念点や指針が明確になったと思う。次回からは実際に手を動かしながら考えてゆきたいと思っているので、気長に記事の更新を待っていてほしい。


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