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読書が困難だった全米ベストセラー作家~クリス・コルファー

まさかのベストセラー

著書『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』がニューヨークタイムズの全米ベストセラー(児童書部門)になったときの、「まさか!」という表情がこちらです。

児童書部門というと、あの『ハリーポッター・シリーズ』や『スターウォーズ・シリーズ』をおさえての快挙となります。
全6巻発行、30ヵ国語以上に翻訳され、映画化まで決定した『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』。
その後出版された'' A Tale Of Magic ''、" A Tale Of Witchcraft "も、ベストセラーの常連となっており、これまでに16作品を世に送り出しました。

▼ " A Tale Of Magic "の1位獲得と25週連続ランクインの報告

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▼ " A Tale Of Witchcraft "の1位獲得と12週連続ランクインの報告

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失読症が疑われた少年時代

そんな人気作家・クリス・コルファーさんですが、少年時代には失読症の疑いがあり、読書をするにも、非常に努力が必要だったそうです。

・証言1

ぼくは小学生の頃、かなり特別な注意が必要な子だったんだよ。
なぜなら、おそらく失読症だったからなんだ。診断されたことはないんだけどね。
両親はいつも「あんまり沢山、映画やテレビを見せてはいけないよ。子どもの頭をひどくぼんやりさせるからね。」と言われていた。でも、何ともなかったどころか、ぼくの頭を刺激してくれたと思っているよ。
実際、そういうものが、良い物語の書き方を教えてくれたんだ。

ークリス・コルファー 2015.7.31 書店 Barnes & Nobleにて

I required a lot of special attention when I was in elementary school because I probably am dyslexic, but I was never diagnosed.
Parents are always told “Don’t let your kids watch too many movies or TV because it would dim their minds too much,” but I think it did nothing but stimulate mine. I think it really taught me how to tell a good story.
ーChris Colfer July 31,2015  Barnes & Noble

・証言2

診断こそ受けていないけれど、身内では失読症ということで通っていたから、その傾向はあったのかもしれないね。
それだけじゃなくて、ぼくは、単語が15個だとか抜けてる、かなりおかしなメールを打ったりもするんだ。
本当に何かの障害なのかもしれないけど、むしろ、「ぼく独自の言語」を持っていると考えたいね。

ークリス・コルファー 2016.6.28 Publishers Weekly インタビューより

It’s never been diagnosed but dyslexia runs in my family, so that might have been part of it. But also, I write pretty hysterical e-mails that are missing like 15 words. It might be some kind of actual disorder but I prefer to think of it as having my own special language.

ー Chris Colfer June 28, 2016 Publishers Weekly

・証言3


ぼくは失読症で、読書は得意ではありませんでした。
また、本を読むにはめがねが必要だったのですが、それがわかったのは、年齢的にずっと後でした。そのために、読書は、身体的にも負担だったのです。
ただし、それは中学校に入るまでのことで、教師に相談したときに「それなら、実際に目を検査するべきだ」と言われて、調べました。すると、ぼくは遠視だったのです。

ー クリス・コルファー 2019.11.12 対談「インパクト・セオリー」より


『ハリーポッター』との出会い

そんなクリスさんが初めて楽しめたのは、『 ハリーポッター・シリーズ』だったそうです。
この本をきっかけに、つらい現実を忘れられるファンタジーに夢中になり、さらに読書の幅を広げていくこととなりました。

執筆は7歳から

また、幼少から好奇心が強かったクリスさんは、おとぎ話を読んでくれるお母さんを質問攻めにした末、「そんなに知りたければ、自分で書いたら?」と言われ、「作家ごっこ」みたいな感覚で創作を始めました。
これこそが、『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』であり、おばあさまの厳しい指導もあって、文才が磨かれていきました。
いじめなどに苦しんだ少年時代、この執筆作業という逃避場所がなかったら、生きていられたかわからないとおっしゃっています。

失読症の子どもから高齢者まで

こちらは、失読症の子を持つお母さまの、喜びのツイートです。


「今、母親としての幸せをかみしめています。娘が、自分のレベルよりかなり上の『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』を読み、読解力テストで100点をとったのです!これは、娘にとっては快挙で、失読症で本を読むのは大変だったのです。でも、自分から挑戦し、見事にやり遂げてくれました!娘は私の誇りです。」 エミリー・ブリストルさん 2019.12.18 Twitterより

他にも、読書の苦手な子どもたちが、分厚い『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』全6巻を読破したという報告が相次いでいるそうで、実際、私の76歳の身内も、あっという間に読了してしまいました。
私自身も、小学生以来、図書館のカードはずっと真っ白でしたが、この本は楽しく読み終えることができました。

実際に読んでみてまず驚いたのが、まるで「読む映画」のようだということです。
俳優の経験を生かして鏡の前で演技しながら書いたり、「僕のレベルで書けば間違いない」「 10歳児に理解できるように」などと配慮されているため、わかりやすい描写で情景がありありと浮かび、物語の世界に入りやすいと感じました。

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「避難場所」から「おはなしの国」へ

幼かった作者が、現実からしばし逃れるために書き始めた『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』。
並の大人では到底かなわない想像力をもとに、ときにはため息の出るような美しい夢の世界を、ときには複雑な心理を描き出し、ダイナミックで緻密なストーリーは、続きを読み急がずにはいられません。

ひとりの少年の「避難場所」は、世界中の人々の心を遊ばせる壮大な「おはなしの国」(The Land Of Stories)となり、人生をより良いものにする智恵と読書の楽しさを伝えてきました。

日本でも、より多くの子どもたち、そして大人の皆さんに、親しんでいただけたらと思います。