古書を巡る旅 はっし

「荻原朔太郎の書簡発見」前橋市は28日までに、同市出身の詩人、荻原朔太郎(1886~1942年)が知人に送った書簡が見つかったと発表。当時流行していたスペイン風邪にかかったと記しており、「時代を映す貴重な資料」と言われているそうです。以前までなら、一瞥して流していたであろう記事。『わたし、古書が好きなんです…人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思うんです…中に書かれている物語だけではなくて。』目に留まったのは、このように語る主人公と出会ったからかもしれません。

 今回は、最近読んでその世界観にどっぷり浸かってしまいました「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上延)をご紹介します。

 舞台は鎌倉の片隅でひっそりと営業しているビブリア古書堂。三代目店主の篠川栞子は、古書店のイメージにはそぐわない若く綺麗な女性だが、初対面の人間とはあまり会話ができない程の人見知り。しかし古書の知識は広くそして深く、それを頼りにいわくつきの古書の査定や30年前に消えた古書探し、盗難された古書を取り戻すことまで、様々な“依頼”が舞い込んでくる。アルバイトの五浦大輔と共に、並外れた知識と洞察力で、古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。

 夏目漱石、小山清、太宰治、坂口三千代、司馬遼太郎、風見潤、宮沢賢治、江戸川乱歩、横溝正史、手塚治虫、井伏鱒二、坂口安吾、北原白秋…実在する古書にまつわる事件を解いていく物語なので、名前は知っていたけれど読んだことはなかった著作や作者について、概要や生い立ちを知ることができる、それがこの本の大きな魅力の一つです。

並行して、栞子と大輔の恋模様、10年前に忽然と姿を消した母親の影も描かれていくので、現在まで文庫本9冊出ていますが、中盤での飽きや息苦しさを感じることなく、読み進めていけます。

 『どんな鳥だって想像力より高く飛ぶことはできないだろう』 寺山修司が紡いだ言葉のように、想像力は人間に与えられた素晴らしい能力の一つです。コロナ禍で閉塞感漂う中、本で世界を広げてみるのはいかがでしょうか。


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