見出し画像

【白井未衣子とロボットの日常】1・正夢の日 《9》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


アレックスは焦りを感じていた。
操縦席のレーダー反応には、敵機を示す赤い光が点滅を繰り返すだけである。
もちろん、仲間の武人を示す青い光も点滅しているが…問題はその距離だ。
2点の光は近接した途端、赤い光が青い光から遠ざかるではないか。赤い光が向かう方角は愛嬌湾。
(湾上だったら、被害は最小限に抑えられる。本部からのAI射出も可能だが…。)
アレックスはレーダー上の青い光が気になっていた。
だが時間は止まらない。青い光もようやく動きを見せた。
「!?」
青い光も愛嬌湾へ向かっていた。
しばらく経つと、アレックスのヘッドホンに通信が入った。
『よお!』「遅かったじゃないか!」
『悪いなあ、逃げ遅れた人らを助けてたんや。ほら。』
操縦席のモニターが切り替わる。
映るのは…黒いボディに赤のラインが入った人型ロボと、両手に乗る3人の子供達だった。

☆☆☆
男の人が差し伸べた手を、私達は自然と掴んでいた。
兄妹3人、しかも和希兄ちゃんは大人の仲間入りとも言える身長はある。
それをもろともせず、彼は全員背負って、一気に飛んだ。
上空へ出た瞬間、男の人の身体が光り出した!
わからない内に、私達はロボの両手の上にいた。
全身真っ黒な、さっきの敵のロボと同じ高さのロボ。
でも所々に赤のラインが引かれていて、さらにラインは光っている。
ロボの両手は黒ではなくグレーの色だが、関節部分と似たような色味をしているので、違和感を感じない。

雲が漂う上空を、私達はただ眺めていた。
雲の隙間から、濃い青色が見えた。愛嬌湾の波は穏やかだった。
先に敵のロボが向かっていた筈だけど。
男の人…黒いロボがしゃべりだした。
『今から、すごいもん見せたるな?』
黒いロボは私達からある方へ視線を向けた。
SFに出てきそうな、大きなシャトルが飛んでいた。

☆☆☆
「その子供…まさか。」
『頼みがあるんやけど、ジェット機を3つ、ここまで飛ばしてくれへん?』
「子供は論外って言っただろう!?話を聞いてないのか!」
アレックスは怒った。
襲撃前の会話で彼はジェット機のパイロットの条件をあげていた。隣で武人は聞いていた。
武人の行動を見るに、自分の条件を適当に聞いていたんでは、とアレックスは思った。
『敵は1匹だけや。最初はオートでええ。この子らに体験してやろうかなぁって…』
「遊んでるんじゃないんだこっちは!子供達をシャトルに降ろしてお前がやれ!」
仲間の提案に彼はイライラしていた。
しかし、武人の考えは曲げなかった。代わりに、約束というお願いを請うた。
『時間はあれへん。あと10分したら、敵は攻撃しよる。そう俺が塩を撒いたからな。』
「…公園でも、市内でドンパチは原則禁止だからな…。」
誘導自体は間違っていない、とアレックスは認めた。

「だがそれとこれは話は別だ!許可しないからな!」
『指揮は俺がとる。どっちにしろ、単独でも攻撃しよる。この子らの初陣には今がチャンスや。』
モニター越しの黒いロボの視線は真正面に向けられている。
武人の真剣さがひしひしと伝わってくる。
『責任は俺が取る、って宗太郎にも言った。適任者はこの子らしかおれへん。この通りや。』
アレックスは静かに、操縦席のあるスイッチを押す。
すると、水・黄・ピンクの三色の四角いスイッチが、アレックスの右手に現れた。
「どうなっても、知らないからな!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?