見出し画像

【白井未衣子とロボットの日常】9・協議の日《1》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。

国際電話のプランも充実してきた現代となっては、利便性も向上してきた。
海外に縁のない俺が、国際電話を使うなんてな…。
俺・白井勇希は[ラストコア]の臨時支部にいる。
アメリカ東部に広がる海の底の建造物に入っている。
愛嬌湾内の[ラストコア]は敵にバレた理由で一時撤退となったから。
臨時支部となると流石に、愛嬌市に戻れそうにないから。
俺は初めての国際電話を利用する事になったんだ。

電話の相手は友達。共に空手の修行をする同士だった。

『もしもし?』「燈太(とうた)、久しぶり。」
『その声、勇希!?久しぶり!元気にしているの?』
「俺は平気。」
『ずっと心配してたんだよ?課外活動は順調?』
「順調さ。あと2ヵ月で帰れるからな。燈太は?夏の大会どうだった?」
『…予選大会準決勝で…。』
「いいとこ行ったじゃねぇか!」
『でも…くやしいよ。負けたのもくやしいし、何より勇希がいなかったのが、寂しくて。』「燈太…。」
[ラストコア]の仕事を表に出せないから、普通に学生生活を楽しんでる燈太に打ち明ける事ができなかった。
本当だったらもう帰れる頃合いだったが…[宇宙犯罪者]とか言うHRとの戦いが激化して、3ヵ月期間が延びたんだ。

燈太は優しい性格だ。
黙っていて不安にさせているのは俺なのに。

俺は決めた。
「燈太、戻ってきたら、話せる範囲で課外活動の思い出を話したい。
不安にさせたお詫びがしたい。
だからお前も、夏の大会の思い出を話してほしい。」
嫌か?と俺は言葉を付け加えていた。
『むしろ聞かせてほしい。今ちょっとだけでも…。』
「今は帰れない。遠くにいてるから。」
『そっか…帰れないから今話せないんだね。』「そういう事。」
燈太はどうやら腑に落ちないらしい。
電話越しの声からでも、トーンが低いのはわかるから。

こればかりは、我慢してもらうしかない。
延長は後から決まったけども、今俺が伝えてる『課外活動』を終わらせないといけないんだ。
普通に暮らす燈太達に、HRの魔の手が伸びないように。
俺達が立ち向かわなきゃ。

「俺は必ず帰る。思い出話もたくさんする。待っていてほしい。
寂しいのは俺も同じだ。
今度は絶対終わらせるから。」
『…わかった。元気でね。』
「ああ。」
言葉が続かず、電話は終了した。受話器を充電器に差し込んだ。
その後に俺はため息をついた。

「もう戻れないのはわかりきってるけど、友達に隠し事している俺がつらい。
あんなに気にかけてくれる親友は、そうそういないのにな…。」
呟いた後、俺はすぐに通信室を出た。
自分を責めても仕方ない、と切り捨てて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?