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【白井未衣子とロボットの日常】1・正夢の日 《8》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


敵のロボに対抗する術がなかった私達は、逃げている間に攻撃を受けた。
幾多の爆発が、私達を吹き飛ばす。
愛嬌市一の広大さを誇る吉川公園は、残骸と穴が広がるばかり。
避難所の指定がされている地下鉄の入口は、すぐそこなのに…。
「未衣子…大丈夫か?」
「私は大丈夫…。」
「怪我をしているぞ!」
和希兄ちゃんは私の腕にかすり傷があるのを見つけたようだ。
でも、手当をするのは、あの敵から逃げ切ってから…。
『ガキの癖に、しぶといなあ?』
敵のロボは元気が有り余っていて、私達をからかう。
『3人仲良く、あっちへ行きな!』
敵のロボは吠えると、手持ちの大きなライフルを私達に向けた。
人間とロボ。ロボに比べたら小柄な私達は、ライフルの火力を浴びれば一発だ。今でも生きているだけで奇跡だ。
兄妹3人固まって耐えると、別の爆発音が聞こえた。

『うおっ!?』
敵のロボが思わず声をあげ、少し身体のバランスを崩した。
ロボの右の肩部に火の弾が当たったらしい。
ロボは肩部を左手でおさえた。
その隙に移動したのか、一人の男が私達の目の前に現れた。
男は両手を広げ、私達を迎えた。私は男を見た。
助けてくれる人物を見ただけなのに。
何年も似たような内容しか見れない夢を、思い出していた。
目の前の救助者と、夢の中で戦う男の人に、親近感を覚えた。私は証拠のない確信をしていた。

(そうだ、この人だ。)

「大丈夫か?」
男の人の声で、私は彼のお腹に抱きついた。2人の兄も腕を掴んでいる。
「未衣子?」
勇希兄ちゃんは不思議に思ったかもしれない。
初めて出会った男の人に抱きつくなど、普通はあり得ないのだから。

『クソっ!奴に出会ったら考えが台無しになるじゃねぇか!』
男の人の背後で、敵のロボが嘆いていた。
だけど、ライフルの銃口はまだこちらに向けられている。
まだやる気はあるらしい。
『丁度いい、今のうちにまとめて落としてやるよ!』
「おおっと、それはちょっと待ちな。」
『ヒィッ!?』
男の人がそれだけ言ったのに、敵のロボは大げさに反応した。
やけにビビりすぎる。
夢の中の通りだと、やっぱり彼は強いんだ。
私は男の人から離れないまま、そう思っていた。
「ここより西にな?青い海が広がってるとこあんねんけどな?」
西の青い海…愛嬌湾の事かしら?
『海!?』
「先に行ってくれへんかなぁ?30分経っても来えへんかったら、お前の好きにしてええから。」
決着はそこでつけようや。
男の人はロボ相手に余裕を見せていた。

『チィ、わかったよ!テメェ覚えとけよ!』
敵のロボはジャンプしてそのまま愛嬌湾の方角へ飛行した。

「さてと。」
男の人は一時逸らしていた視線を私達に向けた。
周りに集う私達にこう言ったのだ。

「お前ら、一緒にくるか?」

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