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【白井未衣子とロボットの日常】10・誓約の日《5》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


[レッド研究所]のクーランは頭を抱えていた。
自分の部屋に1歩も出ずに、ある現状に悩まされていた。

『強力なHRの不足』だった。
まず、『自慢の息子』のラルクは研究所内どころか、火星圏タレスにもいない。彼は地球に潜んでいるからだ。
次に、雇ったHR達の欠員。
エスト、ヒスロ、ニシア、マルロの4名は既に倒されていた。
依頼を行った時に拳で回線を切られたトンケも、つい最近倒されてしまった。5名全員が、[ラストコア]との関わりを持っている。

「あそこにはラルクがいるが、強大な組織には見えんがなぁ…。
だが結果ははっきり出ているしなぁ。」
以前からクーランは情報をこまめに入手していた。
マルロの報告以外でも、彼は偵察用に衛星やHRを飛ばしていた。
原始地球のロボの正体も、パイロットの素性もわかっているのだが…。

「やっぱ博識な俺が出向かんとダメだなぁ。いくらリーダー格でも、HRは思考力が欠けているわ。」
クーランがため息つきながら呟いていると、部屋の奥のモニター画面が切り替わった。
『クーラン様!』
金髪の顔の良い男性が、真っ直ぐ見つめていた。
音声のボリュームのせいか、クーランの身体が微動に揺れた。

「…ああ、金星の王子様ね…。」
相手を確認すると、彼は平静を取り戻した。

金星圏メイスの、ビウス・エクステラ。
彼がクーランの通信相手になっていた。
実は彼もHRであり、[宇宙犯罪者]に指定されている1人である。
本人はプライドが高く、『犯罪者』のレッテルを張られる事を不服に思っているが。

「何か用?」
クーランはとりあえず、話だけ聞こうとした。
『家来から聞きました!他のHRが全て倒されたと!』
「あー、うん。俺のとこのはな。」
『でしたら、是非我々をお使いくださいませ!』
キラキラと笑顔で話すビウス。

聞き手のクーランは頭を掻きながら、苦い表情をしていた。
「いや、いいわ。ちょっと俺に考える時間をくれや。」
クーランの応答に、ビウスが吠え出した。
「何故です!?我々は準備万全なのですぞ!」
「…お前ら、何にも調べてねぇのか?」
クーランは首を左右に振って、ビウスの過剰さに呆れていた。

「知っていますとも!地球には憎きラルクが生存しているのでしょう!地球人と手を組んで!」
「じゃあ地球人の素性まで…いやこれはいい。
地球産のロボは?あと地球に協力する宇宙人は?
お前さんはどこまで、この情報を知っている?」
『子供が操縦するロボでしょう!』
「ガキが扱うから、地球産のロボの守りが堅いんだろう?」
クーランの答えに、ビウスは口を閉じてしまった。

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