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【白井未衣子とロボットの日常】8・業火の日《3》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


「和希兄ちゃん、マルロは追いかけてる?」
『今は順調だ。異常がなければ、このまま諸島の火山帯に誘導してくれ。』
「わかった!」

私は【パスティーユ・フラワー】でマルロを攻撃、していない。
私達には奇策があったからだ。
奇策を実行する為に、私はあえて『逃げていた』。
『エネルギーの消費には気をつけてくれ。放射攻撃で1割が減少だ。』
『数多すぎるんだよ、あいつら。』
「あとは王子達とAIで倒していくんだね?」
『俺達はマルロだけ専念すれば良いって事だ。どうやら彼も、単騎で挑むつもりらしい。』
「ほんとだ。」
私はモニターの地図を少し確認した。
1体だけ、群れから外れていった敵の赤い点があった。

『予備のエネルギーの補充操作は完了しておく。このまま諸島まで加速してくれ。』
『攻撃してこないか?』
「弾を打ってきた時はうまくかわすわ。バリアだけは作動させて。」
『了解だ。』
和希兄ちゃんからの反論はなかった。

☆☆☆
『加速した?本気で逃げるのか?』
マルロのHR形態【チタン・キュレン】も、【パスティーユ・フラワー】につられてスピードをあげた。
【フラワー】側の攻撃は、今回はマルロに対して1度も仕掛けてこない。
このまま逃げ延びるのを押し切るのか…?ここでマルロは疑問に思った。
逃げる行為は、戦う意志がないと同等の考えでもある。
戦意がなく、さらに意思疎通が不可能となれば、逃げる選択肢が生まれる。

ところが、先程の【フラワー】の攻撃を見て、[ラストコア]に戦意損失の意図がなさそうだった。
自分の仲間達を、容赦なくほぼ1撃で壊滅させたのだから。
(何か、策を考えているな…?)
【チタン・キュレン】の動作が止まった。
マルロが一旦、思考を整理しようとして。
HRは変身型なので、操縦席の概念が存在しない。
周辺の地形の確認は、ほとんど頭部のカメラアイがメインだった。
『周りは海だらけ。だが、もう少し遠くを見れば…。』
【チタン・キュレン】のアイカメラは、視界を広げた。
マルロは海以外の地形を発見した。

『岩だらけの山々か。なぜあそこには、緑がないのか?
もしや、火山か…?』
その時、マルロの心臓にズキっと痛みを感じた。
『う…、まさか、炎?』マルロは動揺してしまった。

天王星圏スイルの民であったマルロは、種族柄水中でも暮らせる生物でもあった。
海王星圏ミラニアのニシア・ぺディルドみたいに、海洋生物と密接した生物ではない。
しかし、天王星圏の星々は基本、氷で覆われた冷水の中で生活してきた。
はっきり言うと、マルロは海などの水中戦が楽だった。
ところが【チタン・キュレン】の武装は、水中戦では弱体化するという矛盾が生じた。
水中戦が得意ならば、水中に特化した武装も持つはず、だが。

(俺達[ヒーストン]は幼少期から虐げられてきた。スイルの種族柄、小柄な体躯は他の族にとって格好の獲物だったんだ。
星も幾度か移っている。)
生物とロボットの禁忌の子供であるHRは、嫌われ者の存在。
故郷のスイルでも拒まれて、帰ることができなかった。

(だから、この星の海で静かに暮らしたい。
地球人に海底の生活は無理だ。
ならば、俺達の故郷にしてもいいだろう。)
【チタン・キュレン】の方向は、岩山と逆向きへ変わった。

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